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天国の扉

セフレの彼は幼なじみ29

 その後、大急ぎで菜那美の秘所を拭いたり、元通りに服を着たりし、足早にトイレを後にした二人。

 幸い、誰にも気づかれることはなかったようだ。

 公園から少し離れると、陸翔がすまなさそうに言った。

「家でやってるわけじゃないのに、平然と中に出してごめんな。大急ぎで表面を拭いただけだし、気持ち悪いだろ? お腹の中にまだ残ってるわけだし……」

「気にしないで。それに、全然気持ち悪くなんかないよ。むしろ、気持ちいいから」

「そっか、ならよかった。でも、嫌なときはちゃんと嫌って言えよ」

「うん、ありがとう」

 陸翔の気遣いに嬉しくなり、菜那美は笑顔でお礼を言った。

 陸翔の指摘通り、まだお腹の中に熱い感触を感じている菜那美。

 出してもらえたことを証明してくれている温もりに、菜那美はまるでずっと陸翔と繋がっているかのような一体感と幸福感を味わっていた。

 夕暮れはまだ遠いようだが、少し日が翳ってきて、一陣の涼しいそよ風が二人のそばを吹きぬけていく。

 爽やかな風を火照った頬に受け、菜那美はこっそりと微笑んでいた。

 心地良さそうに。

 家に着くと、菜那美が思い出したかのように言った。

「あ、陸翔、時間あるかな? 宿題で分かんないところがあって、もしよかったら見てもらいたくて」

「おう、いいぞ。じゃあ、着替えてくるから、また後で」

「ありがとう! また後でね」

 宿題で分からないところがあるということは決して嘘ではなかったが、菜那美としてはその目的以上に、陸翔と二人で過ごせる時間が増えたことに喜んでいた。

 そして、陸翔は軽く手を振ると、足早に自宅へと入っていく。

 菜那美も着替えなどを済ませるべく、素早く家に入り、「ただいま」と中の母親に声をかけた。

「終わったぁ~! ありがとう!」

 自分の部屋にて、陸翔に宿題を見てもらっていた菜那美は、20分ほどかかったがどうにか宿題を終えて、達成感溢れる顔で言った。

 陸翔は柔和な表情をすると、立ち上がって言う。

「気にするなって。また何か分からないことがあったら呼べよ。じゃあ、帰るか」

「あ、待って!」

 間髪入れずに引き止める菜那美。

「ねぇ……ここでもう1回、しようよ。ダメ?」

 いまだお腹にかすかな余韻を感じている菜那美が、ダメモトで言った。

 菜那美としては、もし性交してもらえないにしても、何とか数分でも数秒でも長く、陸翔と二人っきりで過ごしたい思いだったようだ。

 しかし、陸翔は渋い表情で答える。

「でも、おふくろさんが下にいるじゃん。いつノックされるか分からないし、やめといた方が無難だぞ。それに、来週には夏休みが始まるだろ。うちの両親、二人とも木曜に出発するから、それ以降、俺んちで思う存分できるじゃねぇか。だから、今日のところは我慢しておこうぜ。な?」

「うう~ん……それはそうなんだけど……。じゃあ、キスだけして。お願い」

 菜那美はそう言うと、座ったまま目を閉じた。

 陸翔は「しょうがねぇな」と言うと、しゃがみ込み、唇を合わせていく。

 数秒間、唇を重ねていると、菜那美の方から舌を出してきた。

 陸翔は再び完全に座り込むと、自らも舌を出し、絡め始める。

 ねっとりと濃厚なキスが続いた。

 いつしか、陸翔の股間は再び膨らみ始めている。

 菜那美もまた、全身が高ぶってくるのを感じていた。

「じゃあ、するか!」

 突然、陸翔が放った言葉に驚く菜那美。

「え? 陸翔、いいの?」

「うん、気が変わった。というか、我慢できなくなった」

 そう言って、手早くズボンを下ろす陸翔だったが、下着を下ろす前にドアがノックされ、一瞬びっくりして動きを止める陸翔。

 しかし次の瞬間、電光石火の早業でズボンを元通りに穿きなおし、菜那美の真向かいに座った。

 その僅か数秒後にはドアが開かれたので、間一髪のところだ。

 菜那美はただただ呆然としていた。

 菜那美の母が、コップとお菓子の乗ったお盆を手に、入ってきて言った。

「陸翔君、いらっしゃい。ゆっくりしていってね」

「おばさん、お邪魔してます。わざわざすみません」

 陸翔の声色には、少しも動揺がみられない。

 いざってときには肝が据わっているんだなぁ、と感じる菜那美。

 菜那美の母は、テーブルの上にお菓子とコップ2つを置きながら、陸翔に向かって言った。

「あら、また勉強を見てくれてるのね。陸翔君、ホントにごめんね。菜那美も陸翔君くらい、優秀な成績を取ってくれたらなぁ」

「ちょっと、お母さん。私だって、別に成績が悪いわけじゃないでしょ。中くらいじゃん」

「菜那美は中の下くらいでしょ。たま~に中の上があるくらいで、普段はね」

「うう……」

 図星なので何も言い返せない菜那美。

 それでも、こういうときにフォローを待っても、やや寡黙な陸翔にはあまり大きな期待は出来ないので、菜那美が言葉を続ける。

「陸翔の成績が良すぎるだけだってば~」

「とにかく、あなたも頑張りなさいね、菜那美。陸翔君、よろしくね。そうそう、陸翔君は進学、どうするの? もう志望校は決まった?」

 常々気になっていたのに聞けなかったことを母が聞いてくれたので、菜那美はこれ幸いとばかりに、陸翔の返事を待った。

 頭をぽりぽり掻きながら答える陸翔。

「とりあえず候補はいくつかに絞ったよ。夏休み中には、しっかり決めようと思います」

 すると、菜那美の母が言う。

「また菜那美と同じ学校、というわけにはいかないわよねぇ。しっかりしてる陸翔君が一緒だと、私も安心していられるんだけど……」

 菜那美は絶句した。

 菜那美の母は、陸翔に彼女が出来たことを知らないのだ。

 菜那美としては、母に伝えることすらツライ事実だったこともあり。

 そして陸翔もまた、伝えてはいなかった。

 幼なじみの母親に、そんなことを伝える義理はないので、当然のことともいえるが。

 恐る恐る陸翔の顔色をうかがう菜那美。

 しかし、陸翔は顔色一つ変えずに答えた。

「大学は、『やりたいこと』や『学部』で選んだ方がいいので、どうなるかは分かりませんね」

 菜那美は、「陸翔は優しいから、ここでは言葉を濁してくれたんだ」と内心思った。

 実際、彼女がいるのに、あえて菜那美と同じ大学を選ぶ理由はないだろうということは菜那美にも分かっている。

 彼女と同じ大学、ならまだしも。

 少し残念そうな菜那美の母が言う。

「そっかぁ、仕方ないわよねぇ。ごめんね、変なこと言って」

 すかさず母に言う菜那美。

「そうそう、いくら親しい仲だからって、そんなこと言い出すの、失礼だよ」

「まぁまぁ、いいじゃないか、菜那美。おばさん、俺は全然気にしてませんので」

 鷹揚に笑って言う陸翔。

 安心したかのような微笑みを浮かべ、菜那美の母がドアの方へ向かいながら言った。

「ありがとう。勉強の邪魔をしてごめんね。頑張ってね」

 そして、ドアを閉め、菜那美の母は去っていった。