スポンサーリンク
天国の扉

セフレの彼は幼なじみ11

 それからまた数日経ったある日のお昼休み。

 普段は食堂で昼食をとる陸翔が珍しく教室で食べるというので、一緒に食べる事にした菜那美。

 陸翔と一緒というだけで、何気ない昼食の時間ですら菜那美にとってはかけがえのない時間となるのだった。

 陸翔が開く弁当箱を見ると、中には美味しそうなサンドウィッチが詰まっている。

「今日はサンドウィッチなんだね。おばさんも色々上手だね」

 菜那美が言うと、陸翔の表情が僅かに変わった。

 そしてなぜか菜那美から目をそらすようにして答える。

「んっと、これ作ったの、おふくろじゃなくて、絵莉花なんだけど」

 菜那美はハッとした。

 自ら地雷を踏んでしまったような感じだ。

 内心慌てつつも、どうにか声の平静を保ちながら言う菜那美。

「そうだったんだ。彼女さんもお料理が上手なんだね」

 菜那美の心の中では嵐が吹き荒れているが、表情や仕草には出していないので、陸翔にはバレていないようだ。

 再び、サンドウィッチを見る菜那美。

 玉子焼きやベーコン、レタス、トマトなどが彩り鮮やかに入れられていて、本当に美味しそうだった。

 菜那美も料理は得意な方なので、なぜか対抗心を燃やしてしまう。

 燃やしても仕方がないのだが。

 たとえ、菜那美が同じようにお弁当を作ったとしても、もはや陸翔に食べてもらうことは不可能なのだから。

 そんなことを考えていると気分が落ち込んできそうなので、慌てながらも、無理やり話題を違う方向へ向ける菜那美。

「午後から数学だよね」

「ああ~、5時限目が数学とか終わってんな……。こりゃ寝るわ……」

 陸翔なら本当に寝かねない、と思う菜那美だった。

 事実、陸翔が授業中に居眠りするところを何度も見たことがあるので。

 小学生の頃からそうだった。

 授業中に退屈そうな様子を見せると、僅か数分後には寝ていた陸翔。

 そんな陸翔の寝顔を見ることも、菜那美にとっては密かな楽しみだった。

 そんなことを話していると、突然、陸翔が咳き込んだので、びっくりする菜那美。

「大丈夫?!」

「げほっ! トイレ行ってくる!」

 サンドウィッチを一つ頬張っているのだろう、頬を膨らませながらそう言うと、陸翔は咳をしながら教室を走り去った。

 心配でたまらず、後を追おうか悩む菜那美。

 そうこうしているうちに、陸翔が戻ってきて、菜那美はホッと胸をなでおろした。

 陸翔が苦笑しながら言う。

「急いで食いすぎたな。せっかくのサンドウィッチが台無しだ」

「本当に大丈夫?」

「ああ、もちろん。心配かけてごめんな」

「ところで……。彼女さんと一緒に食べなくてもいいの? せっかく彼女さんが作られたのなら、陸翔が食べるところを見たいものじゃないかな?」

 菜那美が気になっていたことを尋ねた。

 地雷のような気はしたが、気になって仕方がなかったようだ。

 陸翔は眉一つ動かさずに、平然と答える。

「絵莉花は今日は委員会の用事が終わってから食うらしいし、先に食っててって言ってたから。まぁ、次作ってもらったときは、向こうのクラスに行くかも」

「そ、そっか……」

 納得する菜那美。

 その後は、彼女の話題をすることなく、たわいもない雑談をして、お昼休みを過ごした。

 その日の帰り道のことだ。

 いつものように二人一緒に家まで向かっていると、陸翔が言った。

「おい、今日は予定空いてるか? またやろうぜ」

 何をするのかは、菜那美にも分かった。

 菜那美としても嫌な気持ちは全くなく、むしろここ数日、誘ってもらえるのを今か今かと待ち焦がれていたほどだったのだが、そんな気配を察されてしまうと幻滅されると思い、小声でボソッと答える。

「予定はないんだけど……」

「ん? 体調が悪いのか?」

 少し陸翔の顔色が曇った。

 慌てて否定する菜那美。

「そ、そういうわけじゃなくて!」

「じゃあ、いいよな?」

「う、うん……」

 こうして、すんなり事が運んだ。