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天国の扉

セフレの彼は幼なじみ3

 陸翔は思い切って、菜那美のお尻に片手を強く押し当てた。

 恐る恐る視線を落とし、菜那美の表情を確認する陸翔。

 嫌がる様子も軽蔑する様子も見せない菜那美に安心したのか、陸翔はもう片方の手も菜那美のお尻に当てることに。

 陸翔の両腕は、菜那美のわき腹を経由して、お尻へと伸びているので、パッと見、陸翔が菜那美を抱き寄せているように見えなくもない。

 窮屈な満員電車の中、二人の身体はよりいっそう密着していく。

 陸翔に約9年もの間、片思いを続けている菜那美にとっては、経緯や理由はともあれ、こうした展開になったことで、夢見心地の気分だった。

 胸のときめきが抑えきれない菜那美。

 恋する陸翔の胸に顔をすり寄せ、お尻に手を当ててもらいながら、菜那美は至福の時間を味わっていた。

 とっくに不安や恐怖は雲散霧消し、安心感と幸福感が菜那美を包み込んでいる。

 陸翔もまた、菜那美とは違った意味で、興奮を抑えきれずにいるようだ。

 頬は紅潮し、唾をごくりと飲み込む様子が菜那美にも分かった。

 柔らかな菜那美のお尻を包み込む陸翔の手に力がこもる。

 菜那美を力強く抱きしめ、その柔らかい身体に自分の身体を押し付ける陸翔。

 いつしか、陸翔のズボンの前部分が膨らみ始めていた。

 その反応を、菜那美が気づかないはずはない。

 そして、そのことにより、湧き上がってきたのは喜びであり、嫌悪感では決してなかった。

 大好きな陸翔に、興奮してもらえている、女として見てもらえていることを意識し、菜那美の幸福感は増すばかりだ。

 菜那美は思い切って、陸翔の背中に手を回す。

 これで完全に、二人は抱き合った状態となった。

 眩暈(めまい)を起こしそうなほど幸せで、菜那美の陶酔は止まらない。

 しかし、幸せな時間は過ぎるのが早く、あっという間に二人が降りるべき駅へと電車は到着していた。

「ねぇ、陸翔。久々に……ちょっとだけ、お部屋に来てくれる?」

 二人並んで歩く帰り道、菜那美がおずおずと尋ねた。

 以前はもっと堂々と、頻繁に誘っていたのだが、今は状況が変わってしまっている。

 言うまでもなく、高3になったこの4月から、陸翔が彼女を作ったことが原因だ。

「いいぞ」

 陸翔は一言そう答えた。

 どうして、などと深く理由を聞いてこない陸翔。

 きっと自分の今の不安な気持ちを察してくれているからだろう、と菜那美は思った。

 事実、先ほどのショックからいまだ立ち直りきれておらず、軽く足が震えていた菜那美。

 また、そうして部屋に一人っきりでいたくなかったのとは別に、もう1つ理由があり、陸翔を誘ったのだった。

「さっきのこと……内緒にしてくれる? お父さんお母さんにも心配かけたくないから」

「おう」

 またも一言で答える陸翔。

 こういう受け答えにより、陸翔には人からぶっきらぼうに思われることも多々あったが、菜那美にとってはもう慣れっこだ。

 陸翔は幼稚園時代からそうなのだが、無口で大人しい男子なので。

 成長を重ねても、その性格はあまり変わっていないようだった。

 それでも、今年3月末、春休みに二人で出かけたときには、終始明るい表情を見せてくれていた陸翔。

 それが、4月に入って、突然彼女を作ってしまうなんて……。

 どうして、こうなってしまったんだろう……と、菜那美はずっと考えていた。

 答えは菜那美本人にも分かりすぎるほど分かっていたが、はっきりと認めるのが悲しく悔しい菜那美。

 自分が勇気を出して告白しなかったから……だと。

 菜那美は深く後悔していた。

 しかし、もし断られてしまった場合、親しい友人という関係が壊れることは必至のように思われるし、菜那美は告白に踏み切れなかったのだ。

 そして、陸翔は彼女を作ってしまった。

 陸翔はその報告をわざわざ電話でしてくれたのだが、それを聞き、リアルに気を失いかけた菜那美。

 菜那美の目からは止め処なく涙がこぼれ落ちていた。

 怪しまれないように、必死に取り繕っていたが。

 菜那美がそんなことを思い返しているうちに、二人は菜那美の家へと到着した。