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天国の扉

セフレの彼は幼なじみ2

~~~約9年後~~~

「んん……ん……」

 夏休みが近づく7月初旬、学校帰りの満員電車の中で、菜那美は必死で声を我慢していた。

 菜那美のお尻を、制服の上から撫でる手があったからだ。

 その手の主はスーツ姿の男だったが、菜那美からは角度的にその姿は見えない。

 やがて、男の手はスカート内にも入ってきた。

 慌てる菜那美だが、その手は容赦なく太ももを伝って、上へと上がっていく。

「ひゃ……あ……!」

 さっきから菜那美は必死に、目の前の陸翔にサインを送っていた。

 陸翔と菜那美は、中学校だけでなく、高校生の現在も同じ学校に通っている。

 菜那美の方から、「この高校を受験する予定なんだけど、陸翔はどうする?」と、それとなく聞いてみると、陸翔が「じゃあ、そこでいいや」と半ば投げやりな様子で同意したのだ。

 菜那美は内心、大喜びだった。

 長らく片思いを続けている陸翔と、高校も一緒に通えることになりそうなので。

 そして、必死で勉強し、受験に合格したのだった。

 普段から成績優秀な陸翔も、当然のごとく合格することに。

 そういうわけで、二人は一緒に下校中なのだった。

 そこで、痴漢の魔の手が、菜那美に襲い掛かったわけだ。

 だが、陸翔はのん気にヘッドホンから流れる音楽へと集中しているらしく、菜那美の異変に全く気づいていないようだった。

 声を出したり、身体をゆすったり、大きなアクションを起こせば気づいてくれるだろうけど、それをするとたちどころに、周りの人たちにも痴漢のことがバレてしまうだろう。

 そうなると恥ずかしいので、菜那美はできずにいた。

 なので菜那美は、さりげなく陸翔に目配せでサインを送るぐらいしかできていない。

 そうこうしているうちに、男の手は菜那美のお尻へとたどり着いた。

 下着越しに、柔らかく丸いお尻を撫でてゆく。

「ん……あん……」

 顔を歪めながら、必死で陸翔を見るが、一向に気づく様子はない。

 男の手は、ついには股間をまさぐり始めた。

 最初はショーツの上から撫でるだけだったが、ゆっくりとその指はショーツの隙間を探っていく。

 そして、ショーツ内へと侵入すると、いやらしい動きで菜那美の花弁に触れた。

「いやぁっ」

 嫌悪の声が口をついて出た。

 ここまで事が進んでしまうとさすがに、思い切って陸翔に知らせようと決心する菜那美。

 菜那美は、ギュッと陸翔に身体をくっつける。

 すると、陸翔がようやく顔を向けてくれた。

 菜那美の異変を見てとって、心配そうに声をかける陸翔。

「おい、菜那美。気分が悪くなったのか?」

「そうじゃなくて……。後ろ……」

「ん? なんだって?」

 菜那美は声のボリュームを最小限まで落として話しているので、陸翔は聞き取れない。

 人混みの中なので、苦労しながらもヘッドホンを外し、陸翔は菜那美と向き合う。

「気分が悪いなら、次の駅で降りるか? 一緒に降りてやるから。……ん?」

 肩越しに菜那美の背後を覗いてみて、痴漢に触られていることに気づいた陸翔。

「ちくしょう! このヤロウが……」

 怒りに震える陸翔はすぐさま、腕を菜那美のわき腹からお尻へ向けて回すと、痴漢の手を掴もうとする。

 しかし、苦労している間に、折り悪く、次の駅に到着してしまったらしい。

 アナウンスが流れ、数10秒後にはドアが開いた。

 降りる人たちが、一斉に動き出す。

 陸翔の動きに気づいた痴漢は、たくさんの降りる人たちにまぎれ、逃げ去っていってしまった。

「ちっ、逃がしたか……。菜那美、大丈夫か?」

 乗ってくる人たちが、どんどん車内へ流れ込む中、陸翔が聞いた。

「う、うう……」

 ショックを隠せない様子の菜那美は、上手く言葉を返せない。

「無理に話さなくてもいい。俺が気をつけてるから、もう大丈夫だ」

 安心させるようにそう言うと、陸翔は菜那美から目を離さぬよう見守る。

 すると、菜那美が突然、再び身体を押し付けてきたので、陸翔は驚いた。

「どうした? またか?!」

 また痴漢が来たのかと、急いで確認する陸翔。

「違うの。でも、怖いから……。ねぇ、ちょっとだけ、私のお尻に手を当てていてくれるかな? 他の人に触られないように……」

「え? でも……」

 口ごもる陸翔。

 実は彼には、この4月から交際している彼女がいたのだ。

 もちろん、菜那美ではない。

 なので、いくら気心知れた幼馴染だからといって、菜那美の身体に触れるようなことは、知人友人に知られれば浮気と捉えられかねないだろう。

 こうして彼女以外の女子と一緒に下校してくれていることですら、少しまずいと言われても仕方のないことだと菜那美にも分かっていた。

 ある日突然、陸翔から「彼女以外の女子と二人っきりで下校するのはやっぱりまずい。これからは別々に帰ろう」と言われるかもしれない、と菜那美は覚悟していたほどだ。

 そんなわけで、陸翔が躊躇するのは当然だと理解しているものの、恐怖と不安に耐え切れず、菜那美は目を潤ませる。

 そして、「お願い……」と言って、さらに身体を押し付けてくる菜那美。

 少しきょろきょろと辺りを見回した陸翔は、知り合いが誰も居ないことを確認すると、請われるがまま、菜那美のお尻へと手を回した。

 最初は、全くお尻を触っていなかった陸翔。

 ところが、菜那美がグイグイと、なおも身体を寄せてきて、沸き立つ興奮が陸翔を襲ってくる。

 二人がここまで身体をくっつけたのは、小学生時代の例の一件以来のことだ。

 このときまでは、陸翔を異性だと意識したことは、ほとんどなかったように菜那美は記憶している。

 だが、菜那美はこのときから、陸翔に好意を寄せることになった。

 普段無口な陸翔が、珍しく口数を増やして菜那美を励まし、お化けから菜那美を守ってくれたこのときから。