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天国の扉

セフレの彼は幼なじみ1

 小学3年生の菜那美(ななみ)は、学校の遠足で近所の遊園地に来ていた。

 幼なじみで親友の陸翔(りくと)も同じクラスなので、当然一緒だ。

 陸翔と菜那美は、家が隣同士で、幼稚園の頃からの付き合いということもあって、異性にも関わらず大の仲良しだ。

 お互いの両親同士も仲が良く、二人っきりで遊ぶこともしばしばだった。

 楽しい時間を過ごしていたのだが、お昼過ぎになって菜那美の心がにわかに掻き曇ることに。

 苦手なお化け屋敷に入ることになったからだ。

 菜那美はホラーが大の苦手で、夜中に一人でお手洗いへ行けないほどだったので、心底入りたくなかった。

 しかし、周りはなんだかんだで全員参加していくので、菜那美のみ辞めると、後からクラスメイトに冷やかされかねない。

 必然的に、参加せざるを得ない状況になっていた。

 二人一組となって、ペアで入っていくクラスメイトたち。

 菜那美のお相手は、「仲が良いから当然」みたいな感じで、自然と陸翔に決まっていた。

 普段かなり無口な陸翔が珍しく菜那美の方を向いて口を開く。

 やや心配そうな表情で。

「菜那美、大丈夫か? こういうの苦手なんだろ?」

 図星だったが、強がって胸を張る菜那美。

 弱みを見せたくないのだ。

「得意ではないけど、大丈夫……だと思う」

 語尾に自信のなさが現れる菜那美。

 すると陸翔が言う。

「まぁ、僕が一緒だし、大丈夫か。一人で入るわけじゃないしな」

「う、うん……!」

 引きつった笑いをみせ、首肯する菜那美。

 内心、すでにビクビクしていたのだった。

 そして二人の番が来た。

「じゃ、菜那美。入るぞ」

 陸翔は珍しく明るい口調でそう言うと、菜那美と並んで、入り口からお化け屋敷の中へと入っていった。

 中は当然、暗がりなので、菜那美は早くも怖気づく。

 足がガクガクして、なかなか前へ進めないのだった。

 陸翔が隣の菜那美を見て、声をかける。

「やっぱ、怖いだろ。なんで、我慢してたんだよ……。今なら間に合うかもな。引き返すか?」

 しかし、菜那美は断固として言う。

「そ、そんな……! 引き返すとみんなに迷惑がかかるよ! 我慢できるから、進もう!」

 明らかな強がりだ。

 そして、ヤケクソ気味に、陸翔のやや前に出て、大股で歩き出す菜那美。

 だが、次の瞬間―――。

 突然、菜那美のすぐ横から、大音量と共に、お化け役スタッフが飛び出してきた。

 菜那美が驚倒したのは言うまでもない。

「きゃー!!」

 思わず、隣の陸翔に思いっきり抱きついていたのだった。

 グッと密着する二人の身体。

 そして、ハッとすると菜那美は、あからさまに不自然な様子で身体を離す。

 恥ずかしさに顔を赤らめて。

「ご、ごめん……!」

 菜那美はすぐに陸翔に謝ったが、陸翔の表情には特に変化はなかった。

 陸翔が答える。

「気にしなくてもいいって。僕はこういうホラーとかお化けとか平気でむしろ好きな方なんだけど、今のみたいにいきなりびっくりさせるのは困るな。誰だってびっくりするぞ。こういうの、ホラーとはかけ離れてる気がして、楽しめないなぁ。純粋に、ゾクゾクするような怖さが体験したいのに」

 陸翔も仕草や表情にはあまり出していなかったが、どうやら驚いてはいたらしい。

 そしてそれが非常に不満なようだった。

 菜那美が文句を言う。

「ちょっとぉ~! ゾクゾクするようなのも嫌だってば!」

「菜那美はどっちも嫌いか」

 陸翔はそう言って、笑った。

 滅多に見られない陸翔の笑顔が見られて、ちょっと驚く菜那美。

 すると、陸翔が続けた。

「でも、ここで止まってると、後ろから来るクラスメイトたちに迷惑になるな。進むぞ、菜那美。怖かったら、僕の手を握ればいいよ」

「え?!」

 菜那美は真っ赤になった。

「え~、親子でもないのに、手を握るなんて恥ずかしいよ!」

「でも、さっきみたいなのが、これからもどんどん続くんだぞ。そのたびに、派手に転んだり、僕に飛びついたりしていては、時間がかかって、後ろに迷惑がかかるって」

「う、うう……。じゃあ、お願い……」

 菜那美は渋々手を差し出した。

 その手を握る陸翔。

「じゃあ、行くぞ。安心しろって、僕のそばにいれば大丈夫だ」

 そのとき、菜那美の心に不思議な変化が起こった。

 たのもしく言われたその言葉を聞いた瞬間、心臓が大きく跳ね、胸が熱くなったのだ。

 そして、胸が苦しくなる菜那美。

 その様子を見て、怖がり続けていると勘違いしたのか、陸翔は優しい言葉を続けた。

「ゆっくりでいいからな。もし、後ろの人たちに、後で怒られたら、そのときは一緒に怒られてやるから」

 菜那美は言葉を発することができなかった。

 経験したことのない感情に胸を支配されて。

 陸翔の言葉が嬉しいのに、胸はどんどん苦しくなっていく。

 それは決して、これからまた襲いくるであろうお化けの登場が怖いからではないと、菜那美本人にも分かっていたが、根本原因は分かっていなかった。

 知らず知らずのうちに、温かい陸翔の手をギュッと強く握る菜那美。

 陸翔が言った。

「じゃあ、ゆっくり行くぞ」

 そして二人は暗闇の中、再び先へ進んでいった。

 その後、何度かびっくりさせられたものの、どうにかお化け屋敷を抜けた二人。

 だが、菜那美の胸のドキドキは一向におさまらなかった。

 自宅に帰ってからも。

 なぜか、陸翔を見ると胸の鼓動が早くなり、今までのように気楽に話しかけることができなくなってしまっていた。

 陸翔の方は、もともと寡黙な性格のため、菜那美の態度の変化には全く気づいていない様子だったが。

 菜那美はそれから何週間も経ってから、偶然読んだ本により、自分に起きた変化の理由を知った。

 陸翔に恋をしたからだと。