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天国の扉

猫好き男子と大人な部長20

 帰宅直後、修馬から電話が鳴って驚く架恋。

 身支度を整える間もなく、架恋は慌てて電話に出た。

 幸せそうに少し頬を緩ませながら。

 挨拶を交わしたあと、修馬が早々に本題を切り出した。

「聞いた話なんだけど、どうやら噂になってるみたいだな、俺たちのこと」

「うん、そうみたい」

 特に表情を曇らせることもなく、架恋は答えた。

 こうして噂が広まったにも関わらず、周囲の態度にほとんど変化がなかったので、もはや交際を知られることをあまり気に病んでなかったのが理由だ。

 ところが、修馬は申し訳なさそうに言った。

「ちゃんと約束したとおり、俺だって誰にもこの交際について話していないから、きっと一緒にいるところを見られたんだろうな。あのショッピングモールへ行ったのは、まずかったかも。今にして思えば……あそこ、休日でもけっこう同僚と会う機会が多いから。ごめんな」

「そんな……気にしなくてもいいよ。もう、知られても平気だから。みんなの態度も、普段通りのままだし」

「あ、もうあまり気にしてないんだね。それは、よかった」

 安堵が電話越しに伝わる声で、修馬が言った。

 修馬がさらに言葉を続ける。

「次、会えるのは、多分あさってになると思う。帰りに、駐車場で待ってるぞ。もしいたら、ポップも一緒に」

 ポップを撫でながら自分を待つ修馬を想像し、ほほえましい気持ちになる架恋。

「了解。楽しみだね」

 その後二人は、たわいもない話を楽しんだ。

 翌週水曜日の午前中、架恋は瑞穂と共に3階の会議室へと向かっていた。

 午後から開かれる就活生向けの説明会の準備をするためだ。

 翌週に近くの大きなイベント会場にて開かれる「合同企業説明会」にも出展する予定だったのだが、単独でも幾度か開催する予定になっている。

 会議室に到着した架恋と瑞穂は、ガランとした会議室内にて、急いで準備を開始した。

 エアコンをつけたり、机を移動させたり、忙しく動き回る二人。

 すると準備開始から僅か1~2分後、誰かがドアをノックする音が聞こえた。

 架恋が「はい、どうぞ」と言うと、ドアを開けて一人の男性社員が入ってきた。

 架恋が内心「誰だろう」と思っていると、瑞穂が笑顔でその男性社員に声をかける。

「あ~、丸岡君! お久しぶり!」

 瑞穂の口から何度かその名前が出たことがあったので、会ったことのない架恋でも丸岡の名前だけは覚えていた。

 丸岡も笑顔で瑞穂に言葉を返す。

「倉本さん、お久しぶり。準備、お疲れ様」

 そこで、丸岡が架恋の方を向いた。

 丸岡に対して、心ひそかに「修馬や部長ほどではないけど、ルックスの整った人だな」という印象を抱く架恋。

 瑞穂がすぐに紹介してくれたので、架恋と丸岡は挨拶を交わした。

 瑞穂が嬉しそうに言う。

「ね、相当なイケメンでしょ?」

 本人を目の前にしてよく言えるなぁ、と思った架恋だったが、もはやいつものことなので驚きはなかった。

 架恋が答えるより先に、丸岡が口を開く。

「倉本さん、お世辞はやめてね。それに、今は雑談してる場合じゃないでしょ」

 瑞穂がようやく状況を思い出した様子で言った。

「あちゃ~、そうだったね。さっさと準備を終わらせないと!」

 架恋も頷き、同調する。

 しかし、架恋たちが準備に戻ろうとしたそのとき、再びドアが開いた。

 先ほど、丸岡によって静かにゆっくり開けられたドアが、今度は勢い良く。