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天国の扉

猫好き男子と大人な部長5

 それでも、宮沢は顔を明るくした。

「そっか! よかった! 要するに、『友達としては好きだけど、恋愛的な意味で好きではない』ってことなんでしょ。だったら、俺にチャンスを与えてほしい。1週間だけ、『お試し期間』ってことで、俺と付き合ってくれないか? 1週間終わったあと、そこで交際期間を終わらせるのか、そのまま続けてくれるのかは、石橋さんがそのとき決めてくれればいいから」

「え? でも……そんなの、何だか失礼な気が……」

「失礼って俺に対して? そんなこと全然ないし……むしろ、この条件すら聞き入れてもらえない方が、俺にはつらいよ。今は俺といきなり正式に付き合う気はないんだろ? だったら、こういう形でいいから、チャンスをくれって。頼む」

 ここまで言われて、断る理由が架恋にはなかった。

 架恋はゆっくりと口を開く。

「それじゃ、よろしくね。でも、一つだけ、約束してくれるかな?」

 宮沢は勢い込んで答える。

「一つでも二つでも、俺に出来ることなら、何だって約束するよ!」

「ありがとう。えっとね……絶対に、どんなことがあっても……浮気はしないでほしいの。たった1週間のことだけど、心からのお願い」

「何かと思えば、そんなことか! 1週間だろうが1ヶ月だろうが、俺が浮気をすることは絶対にないから」

「約束してくれる?」

 さらに念を押す架恋に対し、自信満々の笑みを浮かべた宮沢は「もちろん!」と言い切った。

 ホッとしたような表情で、架恋が言う。

「よかった……」

「で、オッケーしてもらえるの?」

「うん、もちろん! 宮沢君、よろしくね」

 笑顔になった架恋が言った。

 猫好きということ以外、宮沢のことをまだほとんど知らない点が不安ではあったが、「ゆっくり時間をかけて知っていけばいい」と考える架恋。

 架恋としては、分不相応なほどの彼氏が出来たので、その心は喜びに満ち溢れていた。

「ありがとう! こちらこそよろしく!」

 元気よく言った直後、それまでの自信に満ち溢れた態度から一転して、おずおずと宮沢が尋ねる。

「恐らく……過去に何か、嫌な経験があるんだね。それで、そんなに念を押してるんじゃないかな……? でも大丈夫、俺は浮気なんかしないから」

「ありがとう。宮沢君は鋭いね……」

「大体分かるって。ああ、無理に話す必要なんか、ないから」

「ううん、別に隠す必要もないし、宮沢君が聞いてくれるなら、話しても問題はないよ」

「あ、俺のことは『修馬』でいいよ。俺も架恋って呼ぶから。で、架恋が話してくれるのなら、聞くよ」

「修馬君、ありがとう」

 架恋は静かにそう言うと、自らの過去の経験について語り始めた。

 過去に二度だけ交際した経験があるのだが、その二度とも、相手男子の浮気によって、別れることとなってしまったことを。

 そして、それ以来一度も交際した経験がないのは、「どうせまた浮気されて、おしまいになる」という思いが大きく影響していることを。

 真剣な表情で、時折相槌を打ちつつ聞いてくれていた修馬は、架恋の話が終わるや否や、言った。

「そっか、そんなことがあったんだね。大丈夫、さっきも言ったけど、俺は絶対浮気なんかしないから」

「ありがとう……」

 過去に二度交際した相手男子は、いずれも女子人気がそこまで高くなかったが、それでも浮気されてしまった架恋。

 それなのに、今回の相手はただでさえ人気者である修馬ということで、よりいっそう不安に駆られたのだ。

 そんな架恋の心配に気づかない様子の修馬が、突然架恋に急接近すると目を細めた。

 雰囲気を察し、目を閉じる架恋の唇に、修馬の唇がゆっくりと重なる。

 修馬は架恋の背中に両手を回しつつ、唇を絡めていく。

 やがて唇を離すと、修馬が嬉しそうに言った。

「架恋。改めて、これからよろしくな」

 架恋も笑顔で頷いた。