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天国の扉

美術教師の羞恥デッサン86(藍里編11)

 これを聞き、藍里は当然黙ってはいられない。

「他に参加者がいるなんて、聞いてません!」

「急遽決まったんだ。すまんが、了承してくれ」

「そ、そんなこと言っても……!」

 ここで、薬が威力を発揮し、藍里の全身に心地よい痺れが走ってしまう。

 両手を使って必死で身体を隠している藍里は、思わず尻餅をついた。

 それを見て、藪下が不満そうに言う。

「おい、今は立ちポーズなんだから、座っててもらっては困る。そんな態度をとり続けるなら、もう続行は不可能だし、ここで打ち切ることにするぞ」

 心の中で、「そういうことになっても仕方がない。知り合いの前で続行されるよりマシ」という気持ちが大きくなってきた藍里は、首を振って答えた。

「申し訳ないですが……他の方が参加されるというこの状況は、当初の約束と違うことになってますし、辞退ということに……」

 しかし、藍里を遮るようにして藪下が言う。

「約束どおり、私は指1本触れていないわけだし、ここは少し大目に見てもらえないか? 急遽決まったとはいえ、確かに突然のことで驚かせてしまって申し訳ないとは思う。だが、せっかくここまでデッサンに付き合ってくれたのだから、ここで中止というのはお互いに得策ではないと思う。私は春日井に、決して安くはない報酬を渡しているんだから」

 説得にかかる藪下だが、今回ばかりは藍里の心もすぐには動かない。

 何より、水島が光範と友人関係にある人物だということが、最も大きな要因だった。

 藪下は少しだけ考え込む様子を見せると、続けて言う。

「じゃあ、今からきっかり15分だけで終了ということにする。そして、特別に、今から5分間休憩を挟もう。さらに、報酬も1割増しにする。これでどうだ?」

 薬の影響に苦しむ藍里にとって、この申し出の誘惑は大きかった。

 絶え間なく続く、薬による攻撃に耐えかねて、藍里は早口に尋ねる。

「本当ですか?」

「ああ、もちろん。どうだろう? 条件をのんでもらえるか?」

「わ、分かりました……」

 一刻も早くお手洗いへと駆け込みたい藍里は、とうとう承諾の返事をしてしまう。

 そして、薮下の「じゃあ、5分間の休憩をとろう」という言葉を背に、バスローブをひったくるように手にとって羽織ると、藍里は足早にお手洗いへと向かった。

 お手洗いに駆け込んだ藍里は、前回同様にすぐさま自慰を始めてしまう。

 一度経験済みだったので、今回の興奮がまたしても性的なものなのだということは藍里にも判然としていた。

 前回、ドアのすぐそばまで藪下がやって来たことを思い出し、「今回はどうか来ないで」と心の中で必死に呟きながら、右手を秘所に這わせる藍里。

 前回も今回も、本来ならば「どうして毎回、こんな風に興奮してしまうんだろう」という疑問が湧き出てもおかしくないところかもしれないが、藍里は何しろモデル初体験なのだ。

 藍里が「自分は経験不足だからこうなっている。慣れているモデルはならないのだろう」と想像しても、不思議はないのだった。

 藍里は無心で、秘所を指でまさぐっていく。

 いつしかその口からは、途切れ途切れに甘い声が漏れだし始めた。

 もちろん、藍里も懸命に声を堪えようとしたのだが、ついつい漏れてしまう。

 そんなとき、藍里の内心恐れていたことが起こった。

 扉の向こうから、藪下の声が聞こえてきたのだ。

「春日井、大丈夫か? 前回、あんなことがあったから、心配して来たんだ」

 慌てて唇をグッと噛み締め、藍里は震える声で答える。

「は、はい……。大丈夫です」

「そっか、よかったよかった。あと2分ほどで休憩終了だから、なるべく早めに準備のほうをよろしく頼むぞ」

「はい……」

 内心、「そこで待機せず、先に部屋に戻っていて」と願う藍里だったが、前回同様、藪下はその場を動こうとせず、そのことは藍里にも分かった。

 なので、早々に自慰を切り上げ、外へ出ざるを得なくなる藍里。

 藍里が水を流して、バスローブをしっかり羽織ってから外へ出ると、待ち構えていた様子の藪下が言った。

「どうやら、体調も大丈夫そうだな。あと15分間だけ、よろしくな」

「はい」

 藍里にはとっくに逃げ道はなくなっている。

 そして、藪下は藍里を後ろに引きつれ、元いた部屋へと向かって歩き出した。