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天国の扉

美術教師の羞恥デッサン81(亜美子編16)

 数十秒後、藪下がようやく亜美子のほうへ向き直って言った。

「じゃあ、開始するか」

「あ、すみません。その前にちょっとだけトイレに行きますね」

「おいおい、休憩は無しでいいって言ったのは、そっちだろう。何を今さら」

 渋い顔をする薮下に向かって、亜美子は懇願する。

「そこを何とか! さっきまでは大丈夫でしたけどぉ、急に……」

「急に、何だ?」

 亜美子の花裂をしげしげと眺めながら、藪下は意地悪く尋ねる。

 亜美子は恥ずかしい気持ちでいっぱいだったが、それを隠すためにあえて明るく言った。

「察してくださいって! トイレに行きたくなったってことですってば!」

「ん? おしっこか? ちゃんと何をしにいくのか言ってくれ」

「なんでそんなことまで言わないとダメなんっすか!」

「言わないと、退室を許可しないぞ。さっさと答えなさい。おしっこか?」

「お、おしっこですよ」

 そう答える亜美子の言葉に、嘘はなかった。

 少なくとも本人は、尿意だと思い込んでいたので。

 しかし、藪下は首を縦に振らないどころか、洗面器を持ってきて言った。

「じゃあ、時間節約のために、この洗面器の中にしてくれ」

「ちょっ?! 何言って!」

 慌てる亜美子だが、藪下は洗面器を手に、涼しい顔でモデル台へと近づいていく。

 そして、亜美子の両脚の間に洗面器を置いて言った。

「この中にすればいい。後で私が処分しておくから」

「だから~! いい加減、変態なことばっか言うのやめてくださいって!」

「でも、この前も私の部屋でしたじゃないか。何を今さら」

「それは違っ! あの部屋には、ヤブッ……下センセとアタシしかいなかったじゃないでしょっ! ここは学校で……」

「そうか、そんなに滝沢先生に呼び出してほしいのか。なるほど」

「あっ、いえっ! でもっ!」

 いつしか自然とポーズを崩し、おろおろする亜美子。

 藪下は後一押しとばかりに言った。

「滝沢先生にはちゃんと言っておいてやるから、さぁさっさと済ませてくれって。私には一度既に見られているんだから、何度見せても一緒のことだろう。デッサンは今日を含めてあと2回で、しかもそんなに何時間も拘束するつもりはないんだから、もうちょっと聞き分け良くしてくれよ」

「分かりましたよっ! やりゃいいんでしょ、やりゃ!」

 亜美子は自暴自棄のような気分になり、強く言い放つと洗面器の上からしゃがみ込む。

 藪下は待ってましたとばかりに、亜美子の正面へと急接近すると、露骨に下腹部に視線を集中させた。

 心の中で、「見んなよ、マジで……。ヤブッチのド変態!」と叫ぶも、当然口には出さない亜美子。

 前回一度経験したとはいえ、さすがにそれだけで慣れるものでもなく、亜美子にとってもこの場で放尿するのは容易ではない。

 理性が強力なブレーキをかけるからだ。

 しかし、そのままじっとしていても、藪下に至近距離から恥ずかしい部分を凝視され続けるだけで何も前には進まない。

 亜美子は心で強く「出しちゃおう」と念じ続けながら、下腹部の筋肉を動かそうとする。

 そして数十秒後、藪下の熱心な視線を受けているその部分から、真下の洗面器に向かって聖水を発射し始めた。

 ぴちゃ……ちょろろろ……。

 洗面器に溜まりゆくと共に、水音が立ち始め、亜美子はさらに狼狽した。

 至近距離から藪下に観察されながら、亜美子は洗面器へ向けて聖水を噴射していく。

 するとそのとき―――。

 突然、ドアの外からガヤガヤ人声がしたかと思うと、ドアが勢いよく開かれた。

 ビクッとした亜美子だが、顔をそちらに向けることくらいしかできない。

 そして、美術部員の男子たちがぞろぞろ入ってきたのだが、彼らが亜美子と藪下にすぐ気づかないはずがなかった。

 男子たちは開口一番に怒号のような歓声をあげると、ほぼ全員が一目散に亜美子らのいるモデル台へと駆け寄っていく。

 ただでさえ、羞恥の極地に立たされている亜美子が、さらに追い詰められた瞬間だった。

 一瞬にして亜美子を取り囲んだ男子たちは、藪下に向かって挨拶することすら忘れているようで、口々に「おお、登校していきなりおしっこシーンが見れるとは!」「あ、不良の子じゃないか、珍しいしこれは見物だ!」「勢いよく小便をしてるなぁ!」などと野次を飛ばす。

 亜美子は「見るな!」など制止する言葉すら出すこともできず、頬を紅潮させながら、恥ずかしい聖水放出を続けた。

 部屋中の視線を集めつつ続いた聖水放出だったが、やがてその勢いは弱まっていく。

 そしてついには完全に止まるに至った。

 ほぼ同時に、男子たちは再び沸きかえる。

 亜美子は、藪下が差し出したティッシュをひったくるように受け取ると、下腹部を大急ぎで拭い、そして手で隠した。

 藪下が立ち上がりながら、わざとらしい様子で言う。

「おやおや、いつの間にやら全員揃ったようだな」

「部員が来るなんて、アタシは一言も聞いてないっすよ!」

 なじる亜美子だったが、藪下が動じる気配はない。

「言い忘れていたか、悪い悪い。じゃ、そういうわけで、デッサンを開始するか」

 ここで、男子たちの中の一人が、ニヤニヤしながら藪下に向かって言った。

「先生~! 今日は剃毛はやらないんですか~?」