スポンサーリンク
天国の扉

ちょいS部長の羞恥レッスン63

 終業時間後、彩乃ら他の社員に挨拶をした後、璃子は藤崎のデスクへ行き、頼まれた作業についての説明とアドバイスを受けた。

 藤崎が言っていたように、さほど難しい作業というわけでもないため、すぐ飲み込めた璃子。

 そんな璃子の様子を見て、藤崎がパソコンの電源をオフにしてから言った。

「もう説明は十分だろう」

 そして、いかにも「さぁ、終わりだ。帰るぞ」と言わんばかりに立ち上がる藤崎。

 璃子が慌て気味に言った。

「あ、あのっ!」

「質問があるのなら、もっと早く言え」

「違うんです……。その……」

 いざ、こうして「打ち明けるとき」になると、璃子は自分でも驚くほど言葉が出てこない。

 璃子は自宅で一人、何度もシミュレーションやイメージトレーニングを重ねてきたのだが、この場ではそんな下準備や練習が全く活きてこなかった。

 しかし、「早く言えよ」と言いたげな空気を、藤崎の表情から敏感に感じ取った璃子は、意を決して言葉を続ける。

「ええっと……お伝えしたいことがありまして……」

 こう言いながら、璃子の頭にあるアイデアが浮かんでいた。

 この場のために用意してきた内容とは違うものの、璃子は頭に浮かんだままのことを言う。

「藤崎部長は……先月のある夜、私におっしゃいましたよね。その……『身体が疼いたときは、いつでもねだってこい。気分次第だけど、相手してやる』みたいなことを……」

 言い終わった瞬間、璃子は後悔した。

 これではまるで、おねだりしているみたいだからだ。

 璃子は内心「準備してきたとおりに言えばよかった……。私、何を言ってるんだろう」と思い、狼狽しながらも自らをフォローする言葉を探す。

 ところが、璃子が次の言葉を発する前に、藤崎がすぐに言葉を返してきた。

「ふん、なるほど。お前は身体が疼いてきたわけか、璃子」

 藤崎から「璃子」と名前で呼びかけられた瞬間、璃子の心は驚きと喜びに大きく跳ねた。

 こうして下の名前で呼ばれるのは、関係解消のあの日以来のことだ。

 ドキドキする璃子に近づくと、藤崎は正面から抱き寄せるように手を伸ばし、スカートの上からお尻を撫でる。

 璃子は藤崎に全てを委ねるような気持ちで、目を閉じてじっとしていた。

 ところが、藤崎はそれ以上は何もせず、身体を少し離して言う。

「それでは、遠慮なく相手してやろう。今晩は俺の家に泊まっていけ」

「え……あ……」

 嬉しさのあまり、言葉が出てこない璃子。

 たった一晩ながら、また藤崎宅にお泊りできるかと思うと、璃子は胸のときめきが抑えきれなかった。

 こうなってしまうともう、「気持ちを伝える」という当初の目的がすっかり吹き飛んでしまうことに。

「今さら『やっぱりやめます』というのは通用しないからな。まず、お前のアパートに寄ってやるから、必要な荷物をさっさとまとめろよ。じゃあ、帰るぞ」

 そう言うと藤崎はきびすを返し、自分のデスクに戻る。

 夢見心地の璃子も、ハッと我に返ると、急いで帰り支度を進めた。

 心の中で、「そういえば、気持ちをまだ伝えられてない……。でも、せっかくこうしてお泊りを進めてくださっているのに、それを遮ってまで伝えられないよ。チャンスがあれば今日でもいいけど、告白はまた今度でもいいかな」と呟きながら。

 藤崎の車で自宅アパートまで送ってもらい、荷物をまとめに立ち寄った璃子。

 そこで璃子は着替えを済ませると、必要な荷物をスーツケースに詰め込んで、車に戻った。

 璃子が助手席に戻り、シートベルトを締めるのを見ながら藤崎が言う。

「その服は、俺が買ってやったやつか」

 璃子はあえて、藤崎に買ってもらったプリーツスカートとキャミソールを着けてきたのだ。

 すぐ気づいてもらって嬉しくなった璃子が答える。

「はい、愛用させていただいてます」

「そうか」

 藤崎はそれだけ言うと、周囲を確認してから車を発進させる。

 しかし璃子は、その短い返事を聞くだけで、藤崎の機嫌が良いことに気づいていた。

 その後、いつか来たことがある中華料理店にて夕食を済ませた二人。

 そして辺りが薄暗くなり始めた頃、車は藤崎宅へと到着した。

 車から荷物を下ろすと、璃子は懐かしい家を見上げる。

 それから、家の鍵を開けて「早く入れ」と言う藤崎に促され、璃子は家の中へと入った。

 玄関に入っただけで、感慨無量の璃子は思わず藤崎に抱きつきたくなる気持ちを懸命に堪える。

 ところが、ドアの鍵を閉めた藤崎がゆっくりと璃子に近づくと、突然唇にキスしてきた。

 唇を絡め合いながら、自然と抱き合う格好になる二人。

 やがて藤崎が唇を離したが、璃子は恍惚の表情を浮かべたまま、名残惜しさを隠し切ることはできなかった。

 藤崎が静かに言う。

「ふん、キスだけでは物足りないんだろう。ベッドで抱いてやるから、さっさと準備をしてこい」

「はい……!」

 早くも股間が濡れ始めているのを感じながら、璃子は浴室や洗面所の方へと大急ぎで向かった。