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天国の扉

ちょいS部長の羞恥レッスン60

 どれくらいの時間が経ったのだろう。

 二人はいつしか、どちらからともなく花火鑑賞に戻っていた。

 もちろん、向かい合って繋がったままの体勢で。

 自身の両肩に置かれた藤崎の大きな手の温もりを感じながら、璃子はまるで藤崎に守ってもらっているかのような気分を味わっていた。

 いまだ花筒に挿し込まれたままのシンボルが、やや復活の兆しを見せていることも影響したのかもしれない。

 もはや隣のカップルの事など一向気にならなくなった璃子は、充足感と安心感に包まれながら、藤崎と一緒に花火を楽しんだ。

 午後8時20分頃になると、花火大会はクライマックスを迎えた。

 巨大な花火や派手な花火が連発され、眩いばかりの閃光が星空を照らす。

 その音も当然ながら、並々ならぬ迫力で、隣のカップルと一緒に璃子は自然と歓声をあげていた。

 8時半となり、花火大会が幕を下ろすや否や、隣のカップルは軽く璃子たちに会釈をした後、そそくさと足早に立ち去っていった。

 これでようやく二人っきりとなり、ホッと胸を撫で下ろす璃子。

 しかし安心した途端、出発前に散々感じていたあの寂しさが復活してきた。

 そう、今夜で関係が終わるということは、藤崎とこうして交わるのもこれが最後なのかもしれないのだ。

 華やかな花火大会が終わり、静けさと暗闇に包まれたことも、璃子の寂しさに拍車をかけていた。

 色々考え事をしていて動けない璃子に向かって、藤崎が囁く。

「おい、そろそろ離れろ。もう終わったから、ここにいても仕方ないだろ。明日も出勤しないといけないこと、忘れるな」

「はい……」

 反論できず、そっと身体を離す璃子。

 シンボルから解放された花裂からは、まもなくいつもの白濁液が顔を出した。

 それから後始末を済ませた二人は、帰路につくことに。

 人々のざわめきが徐々にトーンダウンしていく夜道を歩きながら、璃子は寂しい気持ちを懸命に押し隠して、藤崎の隣を歩いていた。

 食事を外で済ませてからの帰宅後、藤崎はクタクタに疲れきっていた様子で、シャワーを浴びて寝る支度を進めていく。

 璃子も同じく疲れていたので、寝る支度を済ませた後、11時半過ぎには二人はベッドに入っていた。

 明かりを消す前に、藤崎がボソッと尋ねる。

「荷物は大体まとめてあるだろうな?」

「はい」

「明日、仕事が終わったら、まずこの家に寄って、お前の荷物を積む。それから、先月まで璃子が住んでいたあのアパートへ送っていく」

 藤崎の言葉を聞きながら、璃子は「実質今夜で、この関係は本当におしまいなんだ」という実感が湧き、なぜかは自分でも分からないながら涙が出そうになった。

 しかし、「期間を延長してほしい」などとは、璃子の口からは言えそうにない。

 その理由は、プライドからというのももちろんあると思われるが、それとは別に、心のどこかで「どんなプレイや性交をするにしても、相手はやはり『愛し合っている恋人』であってほしい」という気持ちがあったからかもしれなかった。

 璃子はかなり藤崎の全てを気に入り始めている自覚はあったが、「プレイやクールな性格などにも慣れて、愛着が湧いてしまったからでは」と思っているのだ。

 かと言って、今の璃子にとっては、「友則に恋をしているのか」と聞かれると、「はい」と即答することはできなかった。

 自分の中で、徐々に藤崎の存在が大きくなってきており、友則の存在と同等レベルにはなってきている感覚を持っていた璃子だったが、そんなことも藤崎本人に向かって言えるはずもない。

 そして心の中で、「高虎さんにとって、私はセフレでしかないし、替えが利く存在」と呟く璃子。

 そう考えると、「はっきり『好き』と伝えてくれている友則とお付き合いを再開した方がいいのでは」という気も、璃子にはしてきていた。

 黙りこむ璃子に向かって、藤崎が「じゃあ、おやすみ」と言い、電気を消す。

 璃子も絞り出すような声で「おやすみなさい」と答えると、目を閉じた。

 しかし、璃子自身も予想していたことではあるが、様々なことが頭の中に浮かび、なかなか寝付くことができない。

 結局、璃子がようやく寝入ったのは、深夜3時頃だった。