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天国の扉

美術教師の羞恥デッサン76(未桜&早耶香編1)

 約15分後、藪下と未桜がある程度リラックスしていたとき、不意にドアがノックされた。

 ビクッとする未桜とは対照的に、藪下の表情は変わらない。

 膝に乗せたファイルから視線を上げると、藪下は「はーい」とドアに向かって声をかける。

 するとドアがスッと開き、「失礼します」と言いながら早耶香が入室してきた。

 藪下に改めて会釈をした早耶香は、ローブを羽織って座っている未桜を見ると、目を見開いて絶句してしまう。

 未桜のほうも、きょとんとした顔をして、早耶香を見つめていた。

 お互いを見詰め合う二人に向かって、藪下が事も無げに言う。

「ああ、10時からは、モデル二人でのデッサンを行う予定だ」

 早耶香と未桜は異口同音に「え?!」と小さく叫ぶ。

 二人とも、そんな話は初耳なのだ。

「たまには趣向を変えてみようと思ってな。さてと、あと15分ほどで開始するから、魚谷も服を脱いで準備しておいてくれ。ローブはそこのバスケットの中にある」

 藪下にそう言われた早耶香は、半分上の空で「はい」と答えると、再び未桜を見る。

 二人はクラスメイトということで、当然ながら面識はあったものの、さほど親しい仲というほどでもなく、そのことがどうやら二人にとっては気まずさを増している要因になってしまったようだ。

 それでも、今さら逃げ出すわけにはいかない二人は、軽く会釈を交わす。

 そして、早耶香は大急ぎで脱衣を開始した。

 10時前には美術部員の男子たちが続々と登校してくるはずなので、もたもたしていると服を脱ぐシーンを見られてしまうからだ。

 藪下は相変わらず黙々とファイルを見ながら、時折視線を上げて、早耶香の脱衣を盗み見ていた。

 服を脱ぎ終え、ローブを羽織った早耶香は、すぐに未桜のそばへと近寄っていく。

「館林さんも……モデルを?」

「うん。魚谷さんもやってたんだ。まさか、一緒にモデルをするだなんて思っていなかったから、すごくびっくり」

「私も。今日はよろしくね」

「こちらこそ、よろしく」

 これから一緒にモデルをするということが、二人の心を急速に近づけたようで、早くも意気投合の様子だ。

 早耶香はなるべく、モデルのことについては触れないように気をつけながら、未桜に色々話しかける。

 モデルのことについての話題をしてしまうと、どんどん緊張感が高まってしまうように感じたからだ。

 未桜も同感のようで、二人は数分間、たわいもないおしゃべりを続けた。

 そして10時5分前―――。

 早耶香や未桜も予想していたとおり、美術部員の男子たちが次々とやってきて、藪下と挨拶を交わしてからそれぞれの席へとついていった。

 男子たちは、早耶香と未桜の姿を見た瞬間、口々に「おおっ! 今日はモデル二人か!」「楽しみすぎて股間がスパークしそうだ!」「一粒で二度美味しい!」「待ち遠しいぜ!」など、いつもと変わらぬ好き勝手な野次を飛ばす。

 俊哉や一部の男子たちは、そういう野次こそ飛ばさなかったものの、やはり早耶香と未桜のことが気になるらしく、視線をチラチラと向けていた。

 10時ちょうどになる前に、どうやら男子たちも全員揃ったようだ。

 藪下が時計を見ながら立ち上がって言った。

「みんな、おはよう」

 男子たちは嬉々とした様子で、元気よく「おはようございます!」と挨拶する。

 まだ、早耶香も未桜もローブで身体を隠している状態だったが、この段階で早くも、期待感からか股間を膨らませている男子が続出していた。

 藪下が、早耶香と未桜がいる、美術室前方のほうへ歩きながら言葉を続ける。

「もう大体想像している人も多いと思うが、今日のデッサンはモデル二人で行う」

 男子たちはやんやの喝采だ。

 口笛を吹いたり、雄たけびをあげる者すらいた。

 そこで、藪下はペットボトルを2本持ってくると、早耶香と未桜に手渡して言う。

「今のうちにしっかり水分補給をしておいてくれ。今、あまり喉が渇いてなくても、とりあえず飲んでおいてくれたほうがいい」

 早耶香と未桜は素直に「はい」と言って受け取ると、何の疑いもなく、キャップを外して中身のお茶で口を潤す。

 目を輝かせて見守っている男子たちですら、このお茶に媚薬が仕込まれていると知る者はおらず、知っているのは細工をした藪下だけだ。

 早耶香と未桜は、お茶を3分の1ほど飲んでから、相次いでペットボトルを床に置いた。

 二人の様子を見て、「準備は整った」と思ったのか、藪下が高らかに言う。

「では、二人とも、ローブを脱いで、モデル台の上に並んで立ってくれ」

 早耶香は内心「また、いよいよこのときが来ちゃった。特に、俊哉君の視線が気になるけど……今さらもう後には引けないから……。妹のためにも頑張らなくちゃ」と呟く。

 未桜は早耶香ほど緊張していなかったものの、それでもやはり平常心ではいられない様子だった。