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天国の扉

ちょいS部長の羞恥レッスン39

 それからしばらく、平穏な日々が続いた。

 藤崎は仕事の疲れが溜まっているらしく、特に変わったプレイはしてこない。

 普通の性交は何度も求められたが、璃子にとってはそれはもう苦にはならなくなってきていた。

 ただ、問題は羞恥プレイだ。

 璃子はどうしてもそれだけは慣れずにいた。

 そして、資料室やプールで受けたようなプレイを恐れる璃子。

 幸いなことに、その週の木曜日も、特に変わった出来事は何もないまま、終業時間を迎えた。

 ところが―――。

 璃子と藤崎がいつものように連れ立って職場の駐車場へと向かう途中、友則とばったり会ってしまった。

 思わず固まる璃子だったが、藤崎は全く動じていない様子だ。

 そんな二人に向かって、すぐに友則が快活に言った。

「お疲れ様です」

 友則は璃子と交際していた時期に、藤崎と何度か顔を合わせており、二人は初対面ではない。

 涼しい顔で「お疲れ様です」と返す藤崎の隣で、きまり悪さを感じながら璃子も「お疲れ様」と言った。

 友則は急いでいるらしく、「それでは」と言って去っていく。

 内心「駐車場の方へ、部長と一緒に歩いていく姿を見られたらどうしよう」と思っていた璃子だったが、それは杞憂に終わった―――ように少なくともその時点では思えた。

 夕食を済ませた後、璃子はリビングでくつろいでいた。

 藤崎は仕事があるのか、はたまたのんびりしているのか、どちらかは分からないが、書斎にこもったままだ。

 すると、璃子のスマホが突然、音を立てた。

 確認すると、友則からの着信のようだ。

 少し動揺しながらも、すぐさま電話に出る璃子。

 挨拶を交わした後、璃子が用件を聞く前に、友則の方から言ってきた。

「総務部長と付き合ってるの?」

 実際には交際しているわけではないものの、ドキッとする璃子。

 慌てつつも、璃子はどうにかごまかそうとした。

「え? えっと……」

「とぼけても無駄だって。璃子は考えてることがすぐ表情や態度に表れるから、分かりやすいし。それとも、全力で否定できる?」

「そ、それは……。んっと……付き合ってるよ」

 璃子は観念して白状する。

 すると、友則は少し語気を弱めて言った。

「別に責めてるわけじゃないから、隠そうとしなくてもいいのに。ただ、同じ部署での恋愛は、こじれたときに仕事にも影響が出てくるから、気をつけてほしいなって思っただけ。俺らがこうして今も気楽に話せてるのは、多分きっと部署が違うからだし」

「あ、うん……。ありがとう」

 ちょっとホッとする璃子。

 しかし、「口止めしておかないと」と思い、慌てて続けた。

「でも、誰にも言わないで。噂が広まったら……」

「うん、分かってるって。とにかく『上手くいくように。こじれないように気をつけて』って伝えようと思っただけだから。余計なお世話だってことは分かってるけど。ごめん」

 過去の交際経験により、友則が他意なく本心から言ってくれていることを、璃子は悟っていた。

 友則が、裏表のない人柄だと、璃子は分かりすぎるほど分かっていたので。

 もっとも、その率直で優しく、「頼まれたら断れない」という友則の性格は、決して諸手を挙げて喜ぶべきものではないとも、璃子は知っていたが。

 なぜなら、友則はこの性格のせいで、璃子との交際中に他の女性が言い寄ってきたのを断りきれず、二股に至ったからだ。

 心の中で、「誰にでも親切で優しいのはすごく素敵なことだと思うだけど……でも浮気は絶対ダメ。その点、高虎さんは誰に対しても素っ気なくて、冷たく感じることも多いけど、他の女性の誘いに乗るようなタイプでは絶対にないし、浮気されるよりはそっちの方がずっといいかな。……私は高虎さんの彼女じゃないけど」などと考える璃子。

 ともかく、前回の電話にてあんな告白をしてきた友則だったが、本心からエールを送ってくれていることが分かり、璃子は感謝の気持ちでいっぱいになった。

「ありがとう」

 璃子はそう言ったあと、内心「高虎さんとは実際は交際していないから、何だか友則君を騙しているみたいで、心苦しいな」と呟く。

 その後すぐ、「おやすみ」の挨拶を交わして、友則との通話は終わった。