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天国の扉

ちょいS部長の羞恥レッスン33

 後始末を終えた後、珍しく藤崎がリビングでテレビを見るようなので、特に何もすることがない璃子も一緒に見ることに。

 ここに来た当初、藤崎と一緒にいるだけで感じていた気詰まりさは、ほとんど感じられなくなっていた。

 チャンネルを握った藤崎が選ぶ番組は、ニュースなど落ち着いたものばかりだったが、それは璃子も予想していたので、大して驚きはない。

 そして、テレビを見ながら、藤崎がほとんど言葉を発しないこともまた、意外には感じられなかった。

 少し余裕が出てきた璃子は、思い切って今まで聞けなかった質問をぶつけてみる。

「高虎さんのご趣味は……何ですか?」

 質問してみて初めて、「何だかお見合いみたいだ」という気がしてきて赤くなる璃子。

 しかし、藤崎はいつもどおり抑揚のない声で答えた。

「最近は仕事が忙しいせいですっかりご無沙汰だが、テニスやフットサルは好きだし、筋トレもたまにしている。後は、将棋。そのくらいだ」

 最初に出てきた「テニスやフットサル」の部分に、璃子は少し驚いた。

 特にフットサルはチームスポーツなので、どことなく藤崎の普段のイメージとかけ離れている気がしたからだ。

 ただ、「将棋」という答えは、藤崎のイメージどおりだったし、「筋トレ」も「だから、身体がたくましいのかな」ということで納得はできた。

 そして、さっきまで見ていた藤崎の裸のことをうっかり想像してしまい、璃子は勝手にどぎまぎしてしまう。

 ごまかすために何か言おうとする璃子より先に、藤崎が口を開いた。

「璃子は?」

「読書と料理と……サッカー観戦です。高虎さんは、サッカーの方は?」

「俺もテレビ観戦はたまにする」

 これを聞き、「共通点が見つかった」と思い、璃子は喜んで話を膨らませた。

 色々質問も投げかけてみたところ、どうやら藤崎には「特定の、応援しているチーム」がないらしい。

 璃子は何となく、地元のチームを応援していたので、思い切って言ってみた。

「じゃあ、いつか一緒にスタジアムで試合を観戦しませんか?」

「ああ。仕事が落ち着いてからな」

「はい! 楽しみにしてます」

 元気よく答えた璃子は、そこでハッとする。

 冷静に考えてみると、恋人ではなくセフレに過ぎない藤崎相手に、自らデートの誘いをかけたわけだ。

 そして、自然とそういう誘いをかけることができるほどに、藤崎との心の距離が縮まったことを璃子は実感していた。

 藤崎が快諾してくれたことに対しては、今やもう璃子はあまり驚かない。

 この関係が続く中で、藤崎が幾度となく、璃子に対して譲歩を見せてくれていたので、「態度は素っ気ないけど、寛容さも持ち合わせているし、決して意地悪な人ではなく、性格が悪い人でもない」と璃子には分かっていたからだ。

 そこで藤崎が再び言った。

「落ち着くのは来月以降になるだろうから、まだ先の話だ。それより、明日の話をしておく。明日はお前を連れてプールへ行くことにする」

 内心「明日いきなりデート?! プールへ連れていってくれるのは、確か来週って言っていたはずなのに」と少し喜びかけた璃子だったが、すぐにその喜びはしぼんでしまった。

 水着購入の際に藤崎の口から出ていた「何かのプレイをする」という意味の言葉を思い出したのだ。

 いまだに室内で二人っきりの状況下における羞恥プレイにすら慣れていない璃子にとって、「室内ではなく屋外で」というシチュエーションでのプレイにはなおのこと気が進まない。

 幾らデート経験も浅いとはいえ、「デートしてもらえる」というだけで浮かれ気分になりつつあった自分のことが無性に恥ずかしく思えてきた。

 黙っている璃子に対し、念を押すかのように藤崎が言う。

「そのために水着も買ってやっただろ。それに幾度となく言っているように、元々璃子に拒否権はないからな。明日の予定は決定事項だ、いいな?」

「はい……」

 また「嫌々承諾している」と思われないよう、なるべく前を向いて答える璃子。

 藤崎がさらに言った。

「それと、今日から早速、買ってやった下着を着けろ」

「はい」

 こちらは特に「気が進まない」と思うようなことではなかったので、璃子はこころもち大きめの声で答える。

 藤崎は軽く頷くと、再びテレビに視線を戻す。

 それからしばらく、二人は黙ってテレビを見ることにした。