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天国の扉

ちょいS部長の羞恥レッスン27

 それからずっと、テレビを見ながらも、璃子は「心ここにあらず」の状態だった。

 そのうち、気を紛らわそうと、お風呂に入ったり寝る支度をしたりはしたが、結局何をしていても、友則のことが頭に浮かんでくる。

 いつもどおり、藤崎より先にベッドに入ってからも、それは同じだった。

 璃子としては、「藤崎との関係がなければ、今すぐにでも友則とやり直したい」という気持ちが心の大部分を占めてはいたが、彩乃のおしゃべりの話題で出たように「ヨリを戻しても、同じようにダメになる可能性が高い」ということももちろん理解していて、どっちつかずの気持ちだ。

 それに何より、「藤崎との関係がなければ」という前提条件があり、今すぐに友則とやり直すことが璃子にとって不可能なのは間違いない。

「部長とのこの関係は、あと3週間ほどで終わる。それから、友則君とやり直せばいいのでは」という考えも璃子の中に湧いていたが、そこには一つ大きな懸念があった。

 それは、「そうして3週間も待たせているうちに、友則君に新たな彼女ができないか」ということだ。

 そして、その彼女と友則の相性が抜群だった場合、「もしかしたら、今回やり直す機会を逸した場合、永遠にその機会を失うことにつながる」という懸念が、璃子を襲う。

 つまりは、「どうなるかは分からないが、出来れば今すぐ友則とやり直したい。でも部長とのこの関係があるため、どうしてもそれが不可能」というのが、現時点での璃子の状況だった。

 やがて藤崎が寝室に入ってきたので、長い思索をいったんストップする璃子。

 疲れきった様子の藤崎は、これまでと変わらず無言でベッドに入ってきたが、ふと璃子を見つめながら言った。

「どうした?」

「え? 何でしょう?」

「どことなく、様子がおかしいからな」

 この指摘に、「表情に出ないように気をつけていたのに、部長は鋭いんだなぁ」と心の中で思う璃子。

 そして同時に、「こんな些細な変化でも気づくほどに、部長は自分の事を見てくれているんだな」という気もしてきて、璃子はほんの少しだけ温かい気持ちになった。

 普段の藤崎には、冷淡で素っ気ない態度ばかり目立つだけに、なおさら。

「あ、少し疲れていまして。高虎さんもお疲れの様子ですね。大丈夫ですか?」

「ふん、お前に心配されるほど軟弱者じゃない。ごちゃごちゃ言わずにさっさと寝るぞ」

 憮然とした表情でそう言い放つと、消灯する藤崎。

 気を逆なでしてはマズイと思った璃子は、慌てて身を横たえながら「おやすみなさい」と言った。

 そして、藤崎の「おやすみ」という声を聞いてから、「今日こそ早く寝ないと」と思い、璃子は無理やり目を閉じる。

 すると、前日の寝不足もあってか、1時間も経たないうちに寝入ることができた。

 璃子にとっては、特に変わったこともないままに土曜日を迎えた。

 藤崎は璃子に構う余裕がないほど、ずっと忙しそうな様子を見せていたが、週末になってようやく少し落ち着いた様子だ。

 朝食を済ませ、家事が一段落すると、藤崎が唐突に言ってきた。

「買い物に出かけるぞ。ついて来い」

 断る理由がない璃子は、「はい」と言って頷く。

 二人は出発の支度を済ませると、連れ立って玄関へ向かった。

 二人は、藤崎の家からさほど遠くないところにあるショッピングモールへとやって来た。

 藤崎が2階の「ファッションのフロア」にてエスカレーターを降りたことで、「食材などを買いに来た」と思い込んでいた璃子は少し驚かされることに。

 璃子の方を振り返ることもなく、早足で歩く藤崎に、璃子が尋ねた。

「何を買われるのですか?」

「お前のものを色々」

「え?」

 まさか何かを買ってもらえるなどとは予想もしていなかったので、璃子は再度驚かされた。

 すると藤崎は下着売り場の前で足を止めて言う。

「まずはここで下着を買う」

「え? 十分間に合ってますし、申し訳ないですよ!」

 璃子は本心からそう言った。

 しかし藤崎は相変わらずのポーカーフェイスで言う。

「璃子に口出しする権利などないことがまだ分からないのか。黙ってついてこい」

 別に嫌なわけでも迷惑なわけでもないので、璃子は「はい」と答え、大人しく従う。

 再び歩き出した藤崎は、女性用下着のコーナーにて足を止めて言った。

「気に入ったのを幾つか選んで持ってこい。最終的に、俺が決める」

「はい」

 ここに来て、突然恥ずかしさが璃子を襲った。

 彼氏でもない藤崎に、下着を選んで買ってもらうという現在のシチュエーションを意識してしまったからだ。

 既に藤崎と何度も肌を合わせた現在でも、恥ずかしさが軽減されることはないようだった。

 璃子が「候補」として選んだ上下セットの下着3つを、藤崎は全て購入してくれた。

 手渡した瞬間、藤崎は黙ってレジへと向かったので、遠慮する暇すらなかった璃子。

 心の中で「部長が買うって言ってくれたから、仕方ないんだよね」と、璃子は何度も何度も呟いて、自分を納得させようとしていた。