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天国の扉

美術教師の羞恥デッサン51(朋香編1)

~またしてもときは7月下旬、例の面談の日までさかのぼる~

 午後14時ちょうど、藪下はまた別の女子生徒と面談を始めていた。

 その女子の名は、西園寺朋香(さいおんじ・ともか)。

 もちろん、3年H組の生徒だ。

 朋香は、早耶香らに負けず劣らずの美少女ではあったが、もっと目立つ特徴を幾つか持っていた。

 かなりのお嬢様育ちのため、世間知らずで天然なところなどだ。

 逆にそういうところが、一部の男子たちには人気を博していたという事実もあるが。

 そういうわけで、成績は別段悪くないにも関わらず、担任の薮下から「夏休みに、追加で面談をしたい」と打診された際も、疑念や不信感などは一切抱かなかったのだった。

 むしろ、「藪下先生は本当に熱心な先生だなぁ。3年間ずっと先生のクラスに所属できてよかった」とすら思っていたほどだ。

 藪下は、大義名分である面談をものの2~3分で済ませると、わざとらしく困った表情をして溜め息をついてから言う。

「あぁ、溜め息をついてしまってすまない」

「どうかなさいましたか?」

「うん、ちょっと色々あって……な。西園寺も知っていると思うが、私は美術部の顧問をしているんだ。それでこの夏休みに何度か、デッサンをしてみたいと思っていたのだが、モデルとなってくれる若い女性がなかなか見つからず、困ってるんだ。ヌードモデルということで、18歳以上の女性をひたすら探してるんだが……」

 お嬢様の朋香が高額の報酬に釣られるとは到底思えないため、薮下は手を変えてきたようだ。

 どうやら、情に訴えかける作戦らしい。

 朋香が情に厚く、誰にでも親切だということは、周囲の人々に知れ渡っていたので、当然ながら藪下も知っていたはずだ。

 そして、朋香がかなりの天然だということも。

 朋香は早速、「私が手助けできないかな」という気持ちになって尋ねた。

「そのヌードモデルのお仕事って、未経験者は無理なんですよね?」

「いやいや、未経験者でも大歓迎だ。初めてのモデルさんの場合は、ポーズ時間を短縮したり、休憩時間を長めにとったりして、ちゃんと配慮させてもらってるからな。そうやって、『未経験者大歓迎』と謳って募集をかけても、一向に応募がないから困ってるんだ。やはり、一定時間静止してポーズをとるということが、見た目以上に大変なことだからだろうか」

 困っている人を放っておけない朋香が、内心「未経験だから、ちゃんと上手くできるだろうか」という不安を抱きつつ、思い切って言った。

「先生! 未経験ですが、私などはいかがでしょう? 一応18歳にはなってますので……」

 渡りに舟、とばかりに飛びつく薮下。

「おお! 西園寺さえよかったら、是非お願いしたい!」

「ただ、私は背も低く、子供っぽい体型ですし……お見苦しいことになってしまうとは思いますが……。しかも、初めてのモデルということで、上手く制止し続けられるか、私自身かなり不安がありますし……」

「いや、体型のことなんか、一切心配するに及ばないぞ。十人十色ということで、一人一人個性があって当然だからな。それに、最初から言っているように、未経験者に対して出来る限りの配慮をしているから、大丈夫だ。一番大事なのは、『描き手もモデルも一緒になって、芸術作品を作り上げる努力をする』という気持ちだと私は思っている。何となく、理解はしてもらえるか?」

「はい、もちろんです! 微力ながら、先生や部員さんのお役に立てるよう、精一杯頑張ります!」

 明るく言い切る朋香に、相好を崩す薮下。

 それから朋香は、藪下からバイト代や日時についての説明を受けることに。

 こうして、いともあっさりと、朋香のヌードモデル挑戦が決定してしまった。

 そして、未桜と亜美子がモデルを務めた日の翌日―――。

 どんより曇ったこの日、美術部員たちが勢ぞろいしている美術室内へ、藪下の後に続いて朋香も入っていった。

 早耶香、未桜に続き、三日連続となる美少女モデルに、男子たちは沸きかえる。

 朋香はきょとんとしながら、心の中で「元気のいい部員さんたちだなぁ。芸術に対して意欲を燃やされているみたいだし、私も頑張らないと」と呟く。

 そんな朋香に向かって、藪下が早速言った。

「では、そのモデル台の上で服を脱いでくれ。そこに置いてあるバスケットに、脱いだ服を入れてくれればいい」

「はい、分かりました!」

 男子たちに負けじと元気よく答えると、さすがに恥ずかしさは感じつつも、朋香は脱衣を始めた。