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天国の扉

ちょいS部長の羞恥レッスン16

 ところが、エレベーター内で二人っきりになったとき、藤崎が突如として言ってきた。

「私たちの関係のこと、誰にも漏らしてはいないだろうな?」

「はい、もちろん」

 うるさいほどに高鳴る心臓の鼓動を感じながら、かすれる声で璃子は答える。

 藤崎は「そうか」とだけ言うと、ピンポンという音と共にちょうど開いたドアから先に出ていった。

 会議室での準備作業は、滞りなく済ませることができた。

 璃子としても、もう何度も行っている業務なので、当たり前かもしれない。

 藤崎と二人っきりになっていることだけが、璃子を極度に緊張させていたが。

 すると、準備を全て終えて、いざ事務室へ戻ろうかという段になって、藤崎が突然つかつかと璃子に歩み寄ってきた。

 広々とした殺風景な会議室にて二人っきりという状況のため、璃子は不審に思いつつも、どぎまぎしてしまう。

 かといって、逃げ出すわけには決していかないので、璃子が身体を震わせながらその場で立っていると、藤崎はスマホを取り出し、黙ってその画面を見せ付けてきた。

 そこには、「鏡に映った、あられもない格好で自慰をする璃子の様子」が録画された動画が再生されている。

 言うまでもなく、昨日撮られた映像だ。

「いやっ! やめてください」

 そう言って顔をそむける璃子の頬は、一気に赤みを帯びている。

「ふん、いつまでもその傲慢な態度を改めないようだな。この1ヶ月、お前は俺のものだってこと、まだ受け入れてないのか」

 声や表情が全く怒気を帯びていないところが、かえって璃子を震え上がらせた。

「そういうわけじゃ……! でも、そんな動画は早く消してください……!」

「淫らで嫌らしい璃子を俺が楽しむために撮った動画だ。消すはずがないだろう」

「じゃあ、せめて……職場では再生しないでください……」

「俺の勝手だろ。まだ分からないのか。いい加減、立場をわきまえろ」

 相変わらず一切感情の感じられない声で言う藤崎は、さらに璃子に近づく。

 そして、右手でスマホを掲げて動画を見せ付けたまま、正面から抱き寄せるような格好で、璃子のお尻に左手を伸ばした。

 驚いた璃子は声も出せない。

 藤崎は何ら動揺する様子も見せず、璃子のスカート内へ手を滑り込ませると、下着とストッキングの上からその丸いお尻を撫で続けた。

「璃子に拒否権はない。分かったか」

「……はい……。でも……こんな場所じゃ、人に見られます……!」

「ふん、そんなことを言ってられるのも今のうちだけだ。俺たちの関係が始まってまだ三日目だからこそ、軽いプレイで我慢してやってるだけだからな」

 そう言い放つと、璃子のお尻をまさぐるのをやめる藤崎。

 それから動画を見せ付けるのもやめ、藤崎がスマホを操作しながら言った。

「明日からノーパンで来い」

「ええっ?!」

 何気なく言われた言葉に、驚愕する璃子。

 その場で絶句する璃子を尻目に、スマホをしまいこんだ藤崎が、ドアへ向かいながら言う。

「拒否するということは約束違反だ。分かってるな。さて、戻るぞ」

 返事すら出来ずに呆然としながらも、璃子は無意識のうちに、藤崎の後を追う。

 そして、藤崎と共に、会議室を後にした。

 翌朝、璃子は心臓をバクバク言わせながら、いつもの通勤電車に乗っていた。

 昨日の午後、藤崎から受けた命令に従い、ショーツを着けずに家を出たからだ。

 スカート丈が膝まであることと、ストッキング着用までは藤崎から禁止されていなかったことは大きな救いではあったが、それでも璃子は落ち着かない。

 先ほど上った階段では、下から覗かれていないかすごく心配になっていた璃子。

 そしてどうにか電車に乗り込んだ今でも、「痴漢に遭ったらどうしよう」という新たな不安に襲われながら、璃子は駅到着を心待ちにしていた。

 職場に着いてからも、そわそわしていた璃子だったが、幸い「ノーパンで来ていること」を誰にも気づかれずに済んだようだ。

 また、昨日とは違って、藤崎と二人っきりになる機会もなく、何事もないまま、お昼休みを迎えた。

 ところが、昼休み終了間際、彩乃と一緒に会社前まで戻ってきたとき、そこで友則とばったり鉢合わせしてしまった。

 驚きのあまり、思わず固まる璃子だったが、友則も同様の様子だ。

 すると、璃子をちらりと見やってから、彩乃が言った。

「狭山君、お久しぶり! こんなところで会うなんて、珍しいね」

 友則は彩乃と璃子を交互に見ながら、硬い表情のまま言葉を返す。

「久しぶり。ちょっと用事でいったん戻ってきたんだけど、今からまた出発するとこ」

「忙しそうだね~。じゃあ、璃子と私は事務室に戻るから」

「あ、うん。それじゃ、また」

 そう言うと、友則は足早に立ち去っていった。

 ノーパンだということをすっかり忘れ去るほど、この突然の再会に動揺していた璃子は、何も言えないまま、手を振ることしかできない。

 璃子自身もうまく説明できない、複雑な感情が心の中に渦巻いていた。

 休み時間に入ると、彩乃がすぐに話しかけてきた。

 友則とばったり会った衝撃は大きかったものの、その後すぐに仕事を再開したので、おしゃべりをする時間の余裕がなかったからだ。

「璃子、まだ友則君のこと、諦めきれてないんでしょ?」

 友則の話題を出されて、ビクッとする璃子が答える。

「うーん、すごく優しかったし、そりゃまだ好きな気持ちはあるんだけど……もう修復不可能だもん。それと、彩乃がこの前言ってたみたいに、もし万が一、ヨリを戻せたとしても、友則君はまた浮気するんじゃないかな」

「それはもう、浮気しまくるでしょ! 確かに友則君は優しいけど、それは『付き合ってる彼女にだけ』じゃないと思うんだな~。そして浮気に走っちゃうパターンなんだと、私は分析してるよ。根拠は薄いけど、そんな感じじゃない? 悪い人じゃないし」

「だよね……。悪い人じゃないってことは、私もよく分かってる。彩乃の分析は、あながち間違ってないのかも……」

 優しくて気配り上手で明るくて、なおかつルックスも良い友則のことを思い浮かべる璃子。

 彩乃の言うように、まだ友則を諦め切れていない部分が心のどこかにあることを、璃子はうっすらと感じていた。

 無事に終業時間を迎えた帰り際、彩乃と共に挨拶をしてから部屋を出ようとした璃子は、藤崎に呼び止められた。

 またしても、璃子に挨拶してからニヤニヤしながら去っていく彩乃。

 プライベートで一切しがらみのない彩乃を、少し羨ましく思いながら璃子は見送っていた。

 彩乃や他の社員が帰っていって二人っきりになると、璃子のもとへと近づいてきて藤崎が言う。

「ちゃんとノーパンで来たんだろうな?」

「ええ」

 その返答を聞き終わるより早く、藤崎の手が璃子のスカート内へと侵入していた。

 昨日と同じく、璃子を前から抱き寄せるような格好で、璃子のお尻をまさぐる藤崎。

 璃子はその弾力のあるお尻を、ストッキング越しに撫で回され、顔を真っ赤にしていた。

 しばらくそうして璃子のお尻をなでた後、藤崎はいったん手を離して言う。

「じゃあ、次はストッキングも脱いできてもらおう。ただし、明日じゃない」

「えっ?!」

 次なる命令を受け、驚きを隠せない璃子。

 心の中で「今でもすごく恥ずかしいのに」と呟きながら。

 そして同時に、「まさか、明日は何か別のことをさせられるのでは」と不安になってくる。

 明日は、また藤崎の家へ行かなければならない日でもあるので、何か恥ずかしいプレイを強要されることは間違いないように思えた。

 藤崎は璃子の戸惑いなど全く意にも介さぬ様子で、さらに言う。

「明日は下着を着けてきてもいい。明日の午後4時ごろから終業時間まで、俺と璃子は資料室の整理に取り掛かることとなるから、その心積もりでいろ」

「は、はい……」

 明日またしても藤崎と二人っきりになることが判明し、「また何かされるのでは」と不安になる璃子。

 藤崎と二人っきりになること自体、璃子はまだ慣れることができずにいた。

「仕事が終わった後、俺の家へ来ることは覚えているな」

「はい……。あ、荷物は……」

「そんなこといちいち言われなくても分かっている。先にお前のアパートへ寄ってやる」

「ありがとうございます……」

 明日の夕方のことを思うと、不安で気分が沈んでくる璃子は、聞き取りにくいほどの小声で答える。

 いつ雨が降り出してもおかしくない空模様が覗く、窓を見つめながら。