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天国の扉

ちょいS部長の羞恥レッスン4

 金曜の夜、一週間の仕事を終えて、自室にいた璃子だったが、心は全く落ち着かなかった。

 無論、翌日から開始となる、「藤崎部長とのセフレ関係」のためだ。

 正直なところ、いまだに璃子の心の中では実感が湧いていない部分はあったが、戸惑いだけは強く感じていた。

「憂鬱だなぁ……。今まで、友則君としか、エッチどころかキスすらしたことないのに……。やっぱり、好きな人とだけするものじゃないのかな」

 溜め息をついたあと、璃子の口から自然と独り言が漏れる。

「そりゃ、藤崎部長はイケメンだと思うし……彩乃たちがキャーキャー言うのも分かるし……私だって嫌いなわけじゃないけど……。でも、恋愛的な意味で私が好きなのは友則君だけだし……。友則君は今、誰と一緒にいるのかな……」

 そこまで独り言が続いたとき、スマホが大きな音を立てて、着信を知らせた。

 すぐにスマホを手に取った璃子は、「藤崎部長」の文字を見て、一気に顔をこわばらせる。

 緊張しながら、璃子は電話に出た。

 挨拶を交わした後、すぐに藤崎が言う。

「明日夜8時に迎えに行く。晩飯はあらかじめ済ませておけ」

 そう言われただけで、「いよいよ部長とのセフレ関係が始まるんだ」と思い、璃子は「はい」と答えた後、唇をグッと一文字に結んだ。

 すると、藤崎がさらに言った。

「明日が7月12日だから、1ヶ月後の8月11日まで、私たちの関係は続く。とはいえ、我が社はオープンな社風だし、社長も寛大なお人柄だし、私たちは二人とも独身で現在恋人がいないわけだし、何ら後ろめたい気持ちになる必要はない」

 心の中で「そういう問題ではないです、部長! 後ろめたくはないですが、こういう関係はどうかと思います! 恋人関係ならまだしも!」と言いたい気持ちが湧いた璃子だったが、もちろん言えるはずがない。

 ただ、藤崎の言うことは至極もっともだと璃子も理解していた。

 社長自身、女子社員―――つまり自らの部下にあたる女性―――と数年前に結婚したことを、社内の誰もが知っている。

 そういうこともあってか、会社では「社内恋愛禁止」などという風潮は一切なく、かつての璃子と友則のように堂々と社員同士で交際するカップルも決して少なくはなかった。

 色々なことを思いながらも、璃子は「はい」とだけ答える。

 藤崎が言った。

「それと、これから1ヶ月の間は、たびたび私の家に泊まってもらうこととなる。早速明晩そうなると思われるから、その準備を怠らないようにな」

「えええっ?!」

 璃子は開いた口がふさがらなかった。

 心の中で「それって……もし頻繁にそういうことがあるなら、1ヶ月間の期限付きとはいえ、半同棲みたいなものじゃないかな……」と思う璃子。

 藤崎は、そんな璃子の驚きの声を聞いても、何ら気にしていないらしく、平然と言葉を続ける。

「いちいち、島村を送り迎えするのは、私にとっても大変だ。特に平日は、お互い仕事があるからな。うちに来た日は、そのまま私の寝室で寝ればいい」

 璃子は全く気が進まなかったが、反論して「約束違反だ」と言われるのが怖く、何も言えない。

 璃子が無言になったので、その態度を「了解」と捉えたらしく、藤崎が言った。

「ではまた明日20時に」

 それだけ言い残すと、藤崎は一方的に電話を切った。

 藤崎が再び電話を一方的に切ったことに対してではなく、藤崎から出された色々な指示に対して、璃子は唖然としていた。

 しかし、「一度決めたことを変更することが大嫌い」という藤崎の性格だけは、仕事でのやり取りから知っていたので、璃子は次第に諦めの境地へと入っていく。

 またしても「1ヶ月だけの話だから」と自分に言い聞かせると、璃子は気を紛らわせるために好きな音楽を聴き始めた。