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天国の扉

美術教師の羞恥デッサン4(早耶香編4)

 8月初旬のその日―――。

 午前9時55分、いつもどおりの制服姿で、早耶香は美術室前にいた。

 覚悟はとっくに決めたはずなのに、いざ「これからいよいよヌードデッサン」というこの段になってしまうと、戸惑いと不安を隠しきれない早耶香。

 それでも、「頭金」ともいえる2万円を前払いで受け取ってしまっている以上、今さら逃げ出したり辞めたりすることはできないと痛いくらいに分かっていた。

 早耶香は何度も心の中で「1時間の我慢」と繰り返す。

 廊下の窓からは、かすかにセミの声が聞こえていた。

 すると、美術室のドアが唐突に開き、ビクッとする早耶香。

 そうして出てきた藪下に促され、早耶香は藪下に続いて美術室内へと足を踏み入れた。

「モデルを呼んでくる」と言って美術室を出た藪下が、後ろに早耶香を従えて戻ってきたのを見て、室内の部員たちはざわついた。

 早耶香の事を知っている部員は「なんでこの子が」と思ったからだろうし、知らない部員は単純にモデルの若さと美しさに喜んだからだろう。

 中でも、早耶香の幼なじみである俊哉の驚きぶりは尋常ではなかったが、まさか早耶香が出てくるとは思いもしなかったのだろうし無理もないかもしれない。

 早耶香は俊哉の視線に気づき、いっそう緊張の度合いを深める。

 部員たちを軽く見回す早耶香だったが、全員男子だという事実を知って唖然とした。

 てっきり「男女比は大体、半々くらいだろう」と勝手に予想していたことが、完全に外れたからだ。

 そして、「男子ばかり」というこの状況は、早耶香の狼狽をいっそう深めていく。

 ざわつく部員たちに向かって「静かに」と嗜めたあと、藪下が部員たちに向かって言った。

「今日は魚谷にモデルをお願いしている。魚谷はモデル経験がないらしいので、基本的な立ちポーズと座りポーズを1つずつ、それも間に15分間の休憩を挟んでそれぞれ10分ずつとする。変則的だが了解しておいてくれ」

 その後、早耶香に向かって続けた。

「さて、じゃあ準備をよろしく。そこのバスケットに服を入れるといい」

 消え入りそうな声で「はい」と答えると、早耶香は窓際に置かれたバスケットのそばへ向かう。

 再びざわつく部員たちは口々に「マジか」「あの子のスッポンポンが見れるなんて、生きててよかった」「全裸、全裸」などと言っている。

 その声は早耶香の耳にも届いており、早くも恥ずかしさがこみ上げてきていた。

 事前の予想とは異なり、部員たちの中で「純粋に芸術の事だけを考えている人」はごく少数だったことが、早耶香にもはっきりと分かったからだ。

 そして、そんな男子たちの前で脱衣するということはもう、「ストリップ同然」としか早耶香には思えなかった。

 そういうこともあって、とっくに覚悟は決めていたはずなのに、2~3秒ためらう様子を見せる早耶香。

 ややテンパりながらも、身体の前面を見られないように、部員たちの方に背を向ける。

 多数の視線を背中に感じながら、早耶香は服を脱ぎ始めた。

 素早く制服や靴下を脱ぎ、白い下着姿になっただけで、背後からは歓声が上がる。

 男子たちは「おぉ、白か、いいな!」「いかにも清純派って感じだな!」「あー、前方から見たかったなぁ」などと好き勝手な感想を口にしていた。

 俊哉はというと、いまだ目の前の光景が信じられないような様子で、しかし視線を早耶香の後姿からそらすことはできずに、呆然としている。

 じっとしていても何も進まないので、早耶香は意を決してブラとショーツを脱ぎ去った。

 とうとう丸裸だ。