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天国の扉

怪しい媚薬の研究所61(大爆発編9)

 そして、莉央菜を先に外に出すと、自らも出て、そのドアに鍵を閉める。

 これにより、仮に今叩かれているドアをぶち破られたとしても、裏口のドアまで破られない限り、二人は追いつかれない状態になった。

 二人は外に出ると、螺旋階段を駆け下り、駐車場へと向かう。

 駐車場に停められている、いつものワゴンを指差し、宮元が莉央菜に言った。

「あのワゴンで、運転手の山内が待ってくれてる」

「え? ずっと待ってくれてるの?!」

「うん。俺は元々、ちょっと忘れ物をして、研究所にたまたま帰ってきたところだったから。ホント、運が良かったよ、こうして莉央菜の危急に駆けつけることができて。さぁ、急いでワゴンに乗り込み、出発しよう! きっと山内は、俺の帰りが遅くて心配してるぞ」

 二人は全力でダッシュして、ワゴンのもとへ向かう。

 幸い、研究所の出入り口にも、背後にも、追っ手の姿はなかった。

 ワゴンのドアを開け、先に莉央菜を車内へ導いてから、自らも乗り込む宮元。

 運転席に座る山内が、驚きの声をあげた。

「え?! 莉央菜所長?! しかも、なんですか、その格好は?!」

 いつもスーツに白衣を羽織った姿の莉央菜しか目にしたことのない山内には、莉央菜が白衣もナシの上下ジャージ姿なのは不自然に映ったのだろう。

 それに、莉央菜がこのワゴンに乗りこむことは滅多にないので、そのことも山内には意外に思えたようだ。

 宮元が山内に向かって、早口で言う。

「詳しい説明は後だ、山内! それより、さっさと発車してくれ! 行き先は俺が指示する」

 宮元が厳しい表情と切迫した声色で言ったこともあり、普段から宮元に対して従順な山内は、黙って従った。

 速やかにワゴンを発進させ、駐車場を後にすることに。

 追っ手の姿が一切見えないことで、莉央菜は胸をなでおろしていた。

 宮元の指示で、莉央菜のアパートへと向かって走るワゴン。

 車内では、宮元と莉央菜が、運転席にてハンドルを握る山内に対して、これまでの経緯を説明したところだった。

 もちろん、莉央菜が襲われたことや、二人が駅弁スタイルで交わりながら逃げだしたことなどに関しては、曖昧にぼかしながら。

 運転しながら山内が言った。

「それは大変でしたね……。まさか、そんな爆発が起きるなんて……。研究員さんは無事なんでしょうか?」

 宮元が答える。

「薬の効力が、そんなに長持ちしないはずだし、いずれは正気に戻るはずだ。莉央菜の話から判断すると、どうやら大量に浴びたみたいだから、まだしばらくは暴走を続けるだろうけど。それにしても、ヤバかったな、あいつらの様子。目が完全にアッチにイってたぞ」

「私が待機していた、このワゴンのところまで、研究員さんたちに先回りされてなくて、よかったですね」

 ハンドルを左に切りながら、山内が言う。

 宮元が事も無げに答えた。

「まぁ、あいつらは発情して、冷静さを失ってるみたいだったから、そんな風に頭が回らなかったのだろう。俺としては、そう思ったから、あえて俺の研究室まであいつらを誘導してから、裏口経由で逃げ出したわけだ。まっすぐ、このワゴンに向かってたら、きっと乗り込む暇もなく、あいつらに襲われてたと思う」

 その光景を思い浮かべ、ゾッとしながら莉央菜が言った。

「友矢君、すごいね……。短時間でそこまで計算して、迅速に行動するなんて……」

 宮元は、莉央菜の唇にキスしてから、目を細めて答えた。

「そりゃ、好きな女を守るためだから、俺だって必死だ」

 莉央菜はキスを返すと、「ありがとう」と言った。

 山内が、後ろのラブラブな空気を察して、冷やかし気味に口を挟む。

「主任と所長は、本当に仲良しカップルですね!」

 嬉しそうに笑う莉央菜。

 宮元も愉快そうに笑いながら答えた。

「別に誰にも迷惑かけてないから、いいだろ。そんなことより、この先、左折だぞ」

「了解です」

 ワゴンはスムーズに、莉央菜のアパートへ向かって走っていった。