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天国の扉

怪しい媚薬の研究所52(桜子&徹編15)

 徐々に、気を失う前の記憶が戻ってきて、恥ずかしい思いを抱く桜子だったが、そんなことよりも、こうして徹から心配してもらっていることの喜びの方がまさった。

「心配してくれて、ありがとう」

「気にするな、当たり前のことだから。それより、持ち物とか、身体とかを調べてみてくれ。何かなくなってたり、何か変なことをされた形跡はないか? 俺の方は、持ち物はそっくりそのまま無事だし、こうして服を着てることが不思議だけど、それ以外にはこれといって身体に不審な点はないな」

 桜子は、徹が手渡してくれたバッグの中を確認し始める。

 中身は、ポシェットやポーチを含め、全てが無事だった。

 身体もじっくり確認してみたが、特に異常は見当たらないようだ。

「私も異常はないみたい。持ち物も全部無事だし」

「そっか、よかった」

 ホッとした様子の徹は、スッとスマホを取り出すと、手早く操作し、現在地を示す地図らしきものが表示されている画面を桜子にも見せて言った。

「何だか、来たこともないところにいるみたいだぞ、俺たち。とりあえず、すぐ近くに道路があるみたいだし、そこに出ないとな。歩けるか?」

「うん、大丈夫そう。……でも、もうちょっとだけ、休んでいてもいい?」

「もちろん。身体がだるいんだろ? 実は俺も」

 そう言って疲れた表情を見せる徹が、言葉を続ける。

「あの連中の薬が原因だろうな。妙な薬を使ってきやがって……」

「あ、あのクイズというか……作業の方は途中だったよね。どうなるのかな?」

 解きかけの問題用紙を思い出して、桜子が言った。

 徹が苦笑して言う。

「桜子は律儀すぎるって。あんなの、もうどうだっていいだろ。それとも、今さらまたあそこへ行って、続きをやりたいのか? こんな目に遭ったのに」

「そ、そういうわけじゃないけど……」

 うつむく桜子に、徹が言った。

「だったら、もう諦めろって。身体も持ち物も無事だったんだし、不幸中の幸いだと思うしかないな」

 ここで突然、桜子が見るからに肩を落とした。

 表情も曇っており、双眼は潤んでいる。

 不安そうに徹が尋ねた。

「どうした? やっぱり、気分が悪いのか?」

「ううん、そうじゃないの。……私たち、撮影されちゃったんだよね……。あんな画像や動画を販売されちゃったり、ネットで拡散されちゃったりしたら……」

 すると、徹がスッと桜子に近づくと、正面から優しく抱きしめた。

 桜子も抱きしめ返しつつ、徹の膝の上に移動し、気を失う直前の、あの対面座位の体勢となることに。

 桜子が、恥ずかしそうに微笑みながら言った。

「ありがとう、徹。撮影されちゃったことはショックだけど……抱きしめ合ってた相手が徹だから、どうにか耐えられそうなんだと思う……。でも、徹には、もういっぱい、恥ずかしいところを見られちゃったね。おしっこしてるところまで……。徹が貰ってくれないなら、私もうお嫁に行けない……」

「愛してるよ、桜子。俺が必ず貰ってやる。約束だぞ」

「あぁん、徹っ! 大好き!」

 桜子は思わず、徹に力いっぱい抱きつき、キスをしていた。

 桜子の後頭部を「俺のもの」と言わんばかりの様子で撫でながら、唇を絡め返す徹。

 二人はお互いの身体に触れ合いながら、濃厚なキスを続けた。

 やがて唇を離すと、徹が言う。

「桜子、ありがとな。俺としても、もっとここでいっぱいキスしたり抱き合ったりしたい気持ちでいっぱいなんだけど……とりあえず、無事に帰ってからにしよう。桜子も、今日は何も予定がないって言ってただろ。帰ったら、俺の部屋に寄っていけよ。一緒にどっかでメシ食ったあと、俺が送ってやるから」

「うん、ありがとう……! あの……その……今さらなんだけど……私って、もう、徹の彼女になれたんだよね?」

「あのとき、俺が告白して、桜子が受け入れてくれただろ? 俺はもう、付き合ってる気持ちでいるよ」

「嬉しい! ずっとそばにいて!」

 気持ちが抑えきれず、思いっきり抱きついて言う桜子。

 嬉しそうに、そしてどこか意外そうに、笑いながら徹が言う。

「桜子こそ、ずっと俺のそばにいろよ。……ちょっと意外だな、桜子がこんなに甘えん坊だとは思ってなくて。これまで、ずっとサバサバした感じだっただろ。少なくとも、俺と一緒にいるときは」

「好きな人には甘えん坊になっちゃうみたい、ごめんね。甘えん坊、嫌い?」

「いや、俺は好きだけど」

「よかったぁ!」

 再び強く抱きつく桜子。

 すると徹が、言いづらそうに言った。

「あのな、桜子……。この前、着てたスカート、可愛かったから、また着てくれるか?」

「あのタータンチェックのミニ?」

「そう、それ。あのときは、お前に恋してるわけでもなかったんだけど、それでも『可愛いな』とは思った。一緒にいる間中、密かにかなり気になってたし」

「そんなに喜んでもらえるなら、今すぐでも穿きたいな。徹はスカートの方が好みなの?」

「うん、そうかも。桜子は脚も綺麗だしな」

「じゃあ、今度からスカート中心にするね。……できるだけ、徹の好みに合わせたいから。後でいっぱい、好みを教えてね。髪型とかも」

「ありがとな。桜子の好みも、ちゃんと教えろよ」

 そして、二人の唇はまた合わさった。

 熱いキスの後、桜子の髪を撫でながら、徹が言う。

「じゃあ、桜子の準備ができたら出発するか。ここがどこであろうが、何としてでも今日中に帰り着くぞ」

「ありがとう、もう大丈夫。……早く帰って、徹のお部屋に行きたいから」

 顔を赤らめて言う桜子に、苦笑する徹。

「おい、桜子。甘えるのは、帰るまでは我慢しておいてくれ。そんな可愛いことばっか言われてると、俺がこの場から動けないからな。じゃあ、行くか!」

「うん」

 二人は元気よく立ち上がると、荷物を手に取り、連れ立って歩き始めた。

■ 桜子&徹編 終わり ■