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天国の扉

怪しい媚薬の研究所29(朋香編17)

 しかし、ふと何気なく三浦の顔越しに斜め横に目をやる朋香。

 すると、すぐに驚愕の表情に変わる。

 宮元らの存在に気づいた朋香は、思わず叫んだ。

「きゃあああああああっ?!」

 思いがけず、朋香の方からキスしてきてくれたということもあり、嬉しそうに目を細めていた三浦は、朋香の叫びに驚いた。

 そして、何事かとばかりに、朋香の視線を追って、軽く振り向く。

 そこで三浦も事態を理解した。

 宮元らスタッフ3名が、自分たちを食い入るように見ていることに、三浦もようやく気づいたのだ。

 だが、朋香も三浦も口を開くことができなかった。

 次の瞬間には、猛スピードで駆け寄ってきた鈴木と田中の手にするガーゼにより、鼻と口をふさがれてしまったからだ。

 朋香と三浦はそのまま、相次いで意識を失った。

 幾度も悪夢にうなされ続けた朋香は、寝返りを打ちながらようやく目を覚ました。

 ズキズキ痛む頭を手で押さえながら、起き上がる朋香。

 自分の身体に目をやると、いつの間にか元通りに服を着ていたので、朋香は驚いた。

 下着を着けている感触もある。

 それに、朋香がきょろきょろ辺りを見回してみると、そこは見慣れたいつもの駅前で、普段あまり人がいないバス停のベンチだった。

 周囲には人の気配は一切ない。

 時計を見ると、すでに午後4時半を回っていたが、初夏ということもあって、周囲には夕暮れの気配はまだ訪れていなかった。

 遠くの電線に、小さな鳥が一羽、とまっている。

 朋香は狐につままれたような表情で呟いた。

「え……。さっきの全部……夢?!」

 だが、すぐに朋香は気づいた。

 お腹に残る熱い感触に。

「やっぱり、夢じゃないよね。でも、それじゃ……雪彦君はどこに行っちゃったんだろ」

 気を失う直前のことを思い出し、途端に耳まで真っ赤になる朋香。

 三浦と三度も性交し、たっぷりと三浦の樹液をお腹に流し込まれたあと、繋がりあったまま余韻を楽しんでキスしていたとき、宮元らスタッフに見られていたことに気づいた―――。

 それらのことをありありと朋香は思い出す。

 消え入りたいほど恥ずかしい思いの朋香だったが、それよりも何よりも、朋香の心に引っかかっていることがあった。

 それは三浦のことだ。

 ああいうことをされたにも関わらず、どういうわけか、朋香は三浦に対して悪い印象を、今では全く感じていなかった。

 それどころか―――。

「雪彦君とは、もう二度と……会えない?」

 なぜか泣きそうになってくる朋香。

 三浦に対して感じている感情が、恋なのか友情なのか単なる親しみなのか、朋香自身にも分かっていないようだ。

 ただ、三浦と会えなくなってしまったことが、悲しかったのは紛れもない事実だった。

 切なげに朋香は溜め息をつく。

 もしかすると、例の薬には、性欲だけでなく、恋愛感情を起こしたり高めたりする効果もあるのかもしれなかった。

 先の実験で、凜が太一に対して好意を抱いたように。

 その場でじっとしていても仕方ないので、朋香はゆっくりと改札へと向かった。

 言い知れぬ寂しさを抱えたまま。

■ 朋香編 おわり ■