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天国の扉

怪しい媚薬の研究所3(太一&凜編3)

 そして、約束の土曜の朝8時半、太一と凜は、大学近くの駅前で宮元のワゴンを待っていた。

 宮元が迎えに来てくれることになっていたのだ。

 待っている間に、太一が凜に話しかけた。

「テレビ出演って、ホントに儲かるんだな。たった3時間以内で、10万円とか……信じられない」

「そうだよね。しかも内容だって、『自分のことと、相手のことに対する質問に300問ずつ解答する』っていう、難しくも何ともないことだし」

「だよな。別に、最悪、全問不正解でもいいわけだろ。回答を全て終えればいいわけで」

「そうだね。でも、どうせなら、優勝を目指したくない? 結果は後で通知してくださるし、テレビでも一部放映されるって話だから」

「ったく、凜は負けず嫌いだよな」

 苦笑する太一。

 凜も笑って、弁解するかのように言う。

「でも、正解数が多いに越したことはないでしょ。せっかく参加するだから」

「まぁな。それなりに頑張ろう。お、来たみたいだな」

 二人の前方に、先日見たワゴンが姿を現した。

 宮元の運転するワゴンは、太一と凜を乗せて、山道へと入っていく。

「いったい、どこで撮影するんだ」と二人が少々不安になり始めた頃、前の視界が急に開けて、大きな建物が姿を現した。

 凜が運転席の宮元に向かって尋ねる。

「あちらの建物ですか?」

「そうですよ。まもなく到着です。お疲れ様でした」

 そしてワゴンはその建物に隣接する駐車場へと入っていった。

 ワゴンを駐車場に停めた宮元は、太一と凜を建物の入り口まで案内していく。

 建物のドアなどには、「豆川ビル」と書かれていた。

「どうぞ、こちらへ」

 宮元は二人を振り返りながら言うと、自動ドアの向こうへと二人を招きいれた。

「こちらのお部屋です。こちらにて、作業をしていただくことになります」

 学校の教室程度の大きさの、会議室のような雰囲気の部屋に二人を案内して、宮元が言った。

 部屋の中央に大きな四角いテーブルがあり、そばに椅子が二脚置かれている。

 椅子同士は向かい合わせになるようにセッティングされているが、机の真ん中に衝立(ついたて)のようなモノがあるので、お互いの回答をカンニングすることができない仕組みになっているようだ。

 部屋にあるのは、他にホワイトボードや小さな書棚、テレビ、エアコン程度で、全体的には殺風景にみえる。

 エアコンはよく効いており、暑さは少しも感じなかった。

 建物が山の中にあるせいか、外もあまり暑くなかったのだが。

 宮元がさらに言った。

「それでは、準備してまいりますので、そちらに腰掛けてお待ちください。すぐに戻ります」

 そう言うと、宮元は一礼の後、部屋を出ていった。

 残された太一と凜は、言われた通りに椅子に座る。

 椅子の座り心地は決して良くなかったものの、不快というほどでもなかった。

 太一が呟く。

「何だか、試験みたいで落ち着かないな。さっさと終わらせて帰りたい」

「確かにね……」

 頷く凜。

 太一がまた何かを言おうとしたが、ちょうどそこで、ドアがノックされた。

 太一が「どうぞ」と言うと、ドアが開いた。

 入ってきたのはやはり宮元だ。

 宮元の手には紙袋が握られている。

 その中から、紙を複数枚取り出すと、宮元が言った。

「お待たせいたしました。回答は、この問題用紙に直接ご記入くださいね。えっと、今は……」

 ここで言葉を切って、時計を見る宮元。

「9時過ぎですね。大体、12時過ぎ頃までには終わらせていただくよう、お願いいたします。もちろん、早く終わられたら、早めに帰っていただけますよ。終えられたら、机の上にある電話の受話器を取って、『内線』『0』を押してください。すぐに私か、もしくは係員が駆けつけますので。我々は他の撮影がございますゆえ、しばしこのお部屋を離れますが、くれぐれも回答を教えあったり、私語をされたりはご遠慮ください。すでに現在もそうなのですが、天井にある複数のカメラにて、撮影させていただいておりますので」

 太一と凜が思わず見上げてみると、なるほど、幾つかのカメラが設置されているのに気づいた。

 どれも、録画中ということなのか、赤いランプが点灯している。

 すると、宮元が紙袋の中からペットボトルを2本取り出しながら、さらに言葉を続けた。

「お飲み物です。ご自由に、ご遠慮なくお飲みくださいね。また、お飲み物の追加や、ご質問等、何かご用がおありの際には、先ほどご説明申し上げました通り、受話器を外して『内線』『0』をお願いします。それでは、もういつでも開始してください。私はこれで」

 一礼する宮元に、太一と凜は「ありがとうございます」と声をかける。

 宮元は軽く会釈をしてから、ドアを出て行った。

 ドアから出た後、ドアノブに何か異常を発見したのか、何度かガチャガチャ回してから。