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天国の扉

セフレの彼は幼なじみ60

 菜那美と陸翔が、さっき智孝たちと別れた場所まで来ると、すでに二人はそこにいた。

 待ってくれているような様子で。

 すぐに駆け寄った陸翔が、絵莉花に言う。

 絵莉花は嬉しそうに、満面の笑みを浮かべている。

 一方の智孝は、嬉しそうでもあり、困惑しているようでもあり、複雑な表情だ。

「絵莉花、上手くいったんだってな。おめでとう!」

「ありがとう。陸翔君もだよね。おめでとう、本当によかったね、お互い!」

 絵莉花が相好を崩したまま答える。

 そこで、ちらっと菜那美に目をやった智孝が、まるで菜那美の分も代弁するかのごとく、陸翔と絵莉花に向かって言った。

「ちょっと、約束どおり、ちゃんと教えてよ。きっと菜那美ちゃんも同じ気持ちだろうけど、僕にはホント、何が何だか……。えっと……つまり、絵莉花と陸翔は、付き合ってなかったってこと?」

「おう、そういうこと。騙して悪かったな」

 陸翔が申し訳なさそうに言う。

 すると、すでに事情を飲み込んで納得した様子の智孝が、苦笑して言った。

「それはお互い様だし。僕らも同じようなことしてたよね、菜那美ちゃん」

 急に話を振られ、驚いた菜那美だったが、「うん」と答える。

 今度は陸翔と絵莉花が目を丸くした。

「智孝と菜那美も?! マジか……」

 頷く智孝と菜那美。

 智孝がさらに言った。

「でも、絵莉花と陸翔は、どういう意図があって、こんなことを? ちなみに、菜那美ちゃんと僕は、このダブルデートのためっていう意図があって、付き合うふりをしていたわけだけど」

「そうだったのか。絵莉花と俺も、智孝に誘われる前から、どこかのタイミングで、この四人でのダブルデートは計画していたんだけどな。もっとも、この夏祭りで、ってことまでは決めてなかったが。で、質問の答えだが……もちろん、意図はあったぜ。だからこそ、こうしてお互い付き合うことができただろ。絵莉花は智孝と、俺は菜那美と」

「絵莉花と陸翔も最初から、同じ目的だったのか……」

 智孝同様に、菜那美も深い驚きを感じた。

 陸翔がさらに続ける。

「俺たちが付き合うふりをしてなかったら、きっとこうはなっていなかったはずだ。それは、智孝も菜那美も認めてくれると思う」

 やや得意げな陸翔。

 絵莉花も引き続き、にこにこしていた。

 しかし、智孝はさらに聞いてくる。

「でも……なんで、ダブルデートが必要だったの?」

「そりゃ、どんな結果になるにせよ、絵莉花も俺も、同時に告白するのが望ましいと思ったからな。どっちかが先に上手くいくと、残された方はますます告白しにくくなりそうだし。そんな抜け駆けみたいなの、嫌だったからな。それで、この夏祭りアンド花火大会のダブルデートが決まってからは、花火大会が始まる前までの僅かな間に、それぞれ別行動をとって告白しようと決めたわけだ。もっとも、俺には勝算がなくもなかった」

 ここで菜那美が口を挟んだ。

「勝算?」

「ああ。この前、偶然、菜那美の寝言を聞いたんだ。寝言で、俺のことが好きって言ってくれてるのを、な」

「ええ~?!」

 顔が赤くなるのを感じる菜那美だったが、夜の闇のお陰で他の三人にはほとんど分からなかった。

 すると、絵莉花が言う。

「羨ましいなぁ、って思ってたよ。私には全く勝算なんてなかったし……。でも、最初から『同じタイミングで告白する』って決めてたから、どんな結果になっても、後悔はなかったよ。幸い、トモ君が受け入れてくれて、こんな素敵な結果になって……本当に嬉しい!」

 珍しく大きめの声で言う絵莉花。

 智孝は照れくさそうに、頭を掻いていた。

 続いて陸翔が何かを言おうとした瞬間―――。

 僅かながら、空が光ると、ドーンという大きな音が響いた。

 全員、思わず夜空を仰ぐ。

 陸翔が言った。

「うわ、やっべ。花火が始まるぞ! 話は後回しで、とりあえず場所の確保に向かうぞ。絵莉花、例のスポットへ案内を頼む。多分、あそこなら人も少ないだろう」

 首肯し、絵莉花が答える。

「了解! じゃあ、行きましょう。……菜那美さん、お足の方は大丈夫ですか?」

「あ、平気です。さっき、あんな嬉しいことがあってから、もう全然気にならなくて。絵莉花さん、お気遣いありがとう。案内よろしくね」

 絵莉花に感謝の眼差しを向ける菜那美。

 智孝もぼそっと、「よかった」と呟いてくれた。

 陸翔は黙って菜那美の髪を撫でてくれている。

 絵莉花もホッとしたような表情を見せてから、全員に向かって言った。

「それでは、行きましょう。さっき上がった花火は、きっと試し打ちだから、まだ本番までは時間があるはず。間に合いますように」

 そして、絵莉花を先頭にして、一向は、さっき絵莉花と智孝が行った方の道を歩いていった。