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天国の扉

セフレの彼は幼なじみ59

 目を大きく見開き、呆気にとられる菜那美。

 陸翔の言っていることが全く理解できなかったのだ。

 これは夢かなとも一瞬思ったが、どう考えても夢ではない。

 菜那美はしばし、言葉を失っていた。

 見かねたような様子で、陸翔が言う。

「急にこんなこと言われて、びっくりしたと思う。だが、俺は本気だから」

 いまだ混乱のさなかにいる菜那美だったが、どうにか言葉を振り絞って尋ねた。

「冗談……?」

「俺がこんな大事なことで冗談を言うようなヤツじゃないって、菜那美も言ってくれてただろ。セフレの関係を打診したあのとき」

「そ、それじゃ……」

「ああ、本気だ」

 依然として混乱し、おろおろしている菜那美は、長年想い続けた陸翔から告白されたにも関わらず、喜べずにいた。

 そのくらい、冷静さを欠いていたということだろう。

 そしてまた、陸翔が言っていることを、100パーセント信じる気にもなれていなかったともいえるかもしれない。

 菜那美がまた尋ねた。

「で、でも……陸翔には絵莉花さんが……。まさか、今日ここまでの僅かな時間の間に、絵莉花さんと何かあったの?」

 陸翔はすぐに答える。

「何かあった? ……正直言って、何もないし……そもそも、最初から何もない。絵莉花と俺は、元々付き合ってないし。菜那美だって、俺や絵莉花の口から直接、付き合い始めたということを聞いたわけじゃないだろ。みんなが勝手に噂しただけで。それでも、俺が菜那美を騙してたことは確かだし、そのことは謝る。ごめんな」

 頭を下げる陸翔は、顔を上げて再び菜那美を見ると言葉を続けた。

 菜那美は呆然としたままで、言葉を失っている様子なので。

「詳しいことは後でゆっくり……な。で、申し訳ないんだが……返事だけ、聞かせてくれ」

「……返事?」

 混乱したままで頭が全く働かない菜那美。

 陸翔は特に焦る様子も苛立つ様子もなく言った。

「さっき、告白しただろ。菜那美のことが好きだって。どんな答えでも俺は覚悟はできてるから、気にせず本心を言ってくれ」

 こう言われ、菜那美は即答した。

 頭で考えるより先に、口が動いていたような感じで。

「私も陸翔が好き! ずっと、ずっと好きで……。まだあまり、陸翔の言っていることの意味が分かってないんだけど……もし、私が陸翔とお付き合いできるのなら……したい!」

「菜那美!」

 次の瞬間、陸翔は菜那美の頬にキスをしていた。

 そして、陸翔の大きな手で、髪を撫でられる菜那美。

 菜那美はふわふわした、夢の中にいるような気分だった。

 とても幸せな夢の中に。

 しかし、突然、陸翔のスマホが鳴り出し、菜那美を少しハッとさせた。

 すぐにスマホの画面を見てから、菜那美に「ちょっと、ごめんな」と一言断って、電話に出る陸翔。

「もしもし、絵莉花か。そっか、そっちも上手くいったか、よかった。うん、こっちもどうにか。じゃあ、引き返して、さっきのところで合流しよう。ああ、また後でな」

 そう言って、電話を切る陸翔。

「菜那美、ホントにありがとな。それじゃ、絵莉花たちと合流だ。実は、ここまで来たのには、特に意味はないんだ、すまん。ただ、あの二人と別々に行動する必要があったからで……。ま、詳しい話は後でする。今は、ワケ分かんないかもしれないけど、とりあえずついてきてくれ」

「う、うん……」

 菜那美は陸翔と一緒に立ち上がる。

 そして、二人は一緒に元来た道を引き返していった。