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天国の扉

セフレの彼は幼なじみ56

 その日から、菜那美にとって、日々は飛ぶように過ぎていった。

 今の今まで楽しみで仕方なかった夏祭りの日付が、今や菜那美にとっては「その日が来るのが怖い」という日付に変わってしまっている。

 理由は言うまでもなく、「その日に、セフレの関係を解消される」からだ。

 そして、陸翔はああは言っていたものの、「今までよりは、会いにくくなる」ということは間違いないと、菜那美にも分かっている。

 だからこそ、菜那美は、寂しさと切なさを抱えて、日に日に近づいてくるその日付を恐れていた。

 しかし、時間は容赦なく流れていく。

 夏祭り前日まで、ほぼ毎日といっていいほど、菜那美は陸翔の家に入り浸っていたので、「楽しい時間は早く過ぎる」という現象もまた、菜那美を襲っていたようだ。

 ほぼ毎日、性交もしていたが、「夏祭りの日で最後」という期限が設けられたことにより、事後の菜那美を間断なく寂寥感が包み込んでいた。

 性交の最中は、愛しい陸翔と交わっている悦びがあるので、そうしたネガティブな考えは頭に上っていなかったのだが、終わってしまうと我に返ってしまうようだ。

 そして、そんな日々はあっという間に過ぎ去り、夏祭りの日が来た。

 夏祭り当日の夕方、菜那美は浴衣に着替えて、陸翔の家のインターホンを押した。

 陸翔の両親はいまだに家を空けているそうで、依然として家にいるのは陸翔だけだ。

 もっとも、陸翔の母親は、この週末には帰宅するようだが。

 雲が幾つかたなびいている空には、まだ夕暮れの気配は感じられないが、気温は少し下がってきたようだ。

 セミは休まず鳴き続けている。

 菜那美が黙って待っていると、ガチャっと鍵が開く音がして、扉が開いた。

 そして出てきた陸翔が言う。

「おまたせ。お、新しい浴衣だな! 似合ってるぞ」

「あ、ありがとう……」

 菜那美は顔が赤くなるのを感じた。

 今日来ている浴衣は、貯めたお小遣いを使って、この日のために買ったものだ。

 爽やかな水色を基調としており、帯の色は青だった。

 また、浴衣に合わせて、同じ水色の髪飾りを着けている。

 一方の陸翔は、Tシャツにスラックスと、普段着のままだ。

 菜那美の浴衣から視線をそらさず、陸翔が言った。

「じゃあ、少し早いけど出発するか。……夏祭りの後、花火大会のために、徒歩で2キロほど歩かないといけないし、体力はなるべく温存しておかないといけないけどな。浴衣に草履の菜那美にはきついと思うし、心配してるんだが。だから去年は、花火大会だけにして、夏祭りは別の神社のところへ行ったっけ」

「大丈夫だよ。体力はある方だし」

「無理はするなよ。きつくなったら言えよな。……よし、それじゃ、行くか」

「うん、よろしく」

 そして、二人は連れ立って、智孝たちとの待ち合わせ場所である駅前へと向かった。