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天国の扉

セフレの彼は幼なじみ55

 じっとその体勢のまま我慢している陸翔にとっては幸いなことに、約10分後、菜那美は目覚めた。

 もっとも、あと数分このままの状態だったら、さすがに陸翔も菜那美を起こしたとは思われるが。

 目を見開いた菜那美は、数秒で現状について思い出すと、慌て気味に言った。

「ご、ごめんっ! 寝ちゃってて……!」

「いや……気にしなくてもいい」

 真顔で言う陸翔。

 菜那美はすぐさま、陸翔の態度の異変に気づいた。

 長い付き合いなので、ちょっとした口調や表情の変化にも気づくことができるのだ。

「ど、どうしたの? 陸翔……」

「別にどうもしないけど?」

「何か……あったの……?」

 ますます心配になる菜那美。

 陸翔はその質問にはすぐ答えずに言う。

「じゃあ、とりあえず……抜くぞ」

 そして、菜那美からゆっくりと身体を離して、言葉を続ける。

「あのな、菜那美……。考えたんだけど……」

 陸翔はうつむいて言葉を切った。

 菜那美の脳裏に嫌な予感がよぎる。

 陸翔が言おうとしていることについて全く見当もつかないながらも、雰囲気や態度から薄々「何かよくないことだろう」と想像がつくのだ。

 そこで陸翔は一つ軽く息を吐いてから言った。

「セフレの関係、夏祭りの日でおしまいにしよう」

 その言葉を聞いた瞬間、菜那美は凍りついた。

 まるで、時間が止まってしまったかのように。

「え? ど、どうして……?」

 声を絞り出して聞く菜那美。

「俺たち受験生だろ。そろそろ真面目にやらないと、ヤバいからな。それに、絵莉花のことを考えると、罪悪感もあるしな」

 陸翔の答えを聞いても納得しきれない菜那美が言う。

「今まで、ちょっと頻繁にしすぎちゃったから……回数を減らすとかはダメかな。その……息抜き程度に、って感じで……」

「いや、そうは言っても、結局やりまくっちゃうぞ、俺は。ここでセフレの関係を切って、吹っ切るでもしないと」

 関係を切る、という表現を聞き、胸が痛む菜那美。

 今の関係が終われば、もっともっと疎遠になってしまうことを菜那美は熟知していたので。

 菜那美は言葉を失っていた。

 そんな菜那美を心配してか、陸翔が幾分か表情と口調を和らげて言う。

「そんなに寂しそうな顔するなって。別に、俺たちが二度と会わなくなるってわけでもないんだし。ただ、俺も最近けっこう良心の呵責があってな。さっき言ったみたいに、絵莉花に対してもそうだけど、それだけでなく、菜那美に対しても。何だか、菜那美を利用してるみたいだろ。前に話したみたいに、ただでさえ恩のある菜那美に対して、そういうのはよくないと思うし」

「うん……分かった」

「納得してくれたか?」

「だって……前にも話したけど、陸翔って一度決めたら譲らないところがあるでしょ。今回も同じで、もう決めたみたいだし」

 それを聞き、苦笑する陸翔。

「きっちり見破られてるんだな、俺の性格。ともかく、別に今すぐセフレの関係を解消するって言ってるわけじゃないんだし、そんなに寂しがるな。夏祭りまで、としたのは、それ以降、俺たちが真面目に勉強するように、気持ちを切り替えるという意味でな。夏祭りを楽しんだら、俺たちは宿題と受験勉強をきっちりやらないと。なんだかんだで、一人っきりだと、俺もサボりがちだし、菜那美さえよければ今まで通り、俺の部屋に来てくれよ」

「いいの……?」

「もちろん。俺から頼んでるわけだし」

「陸翔、私よりずっと成績がいいし、足手まといになってないか不安で……。私、分からないところを聞いてばっかりだし」

「ったく、菜那美は心配性だなぁ」

 またも陸翔は苦笑して言葉を続ける。

「人に教えるのだって、自分の勉強になってるんだぞ。菜那美に教えつつ、俺も内容を再確認する、みたいな感じだ」

「それなら……是非お願いね」

 少しだけ頬を緩めて言う菜那美。

「おう、任せろ。やっと少し元気になったか。じゃあ、夏祭りの日まで、たっぷりエッチするぞ。菜那美さえよければ」

 菜那美に異論があるはずがなかった。

 一抹の寂しさは菜那美の胸に残ったままだったが、それでも無理に笑顔を作って菜那美が答える。

「うん、よろしくね」

 そして、先ほどの成功の後始末をし、服を着た二人。

 その後は、二人でひたすら勉強に勤(いそ)しんだ。