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天国の扉

セフレの彼は幼なじみ45

 翌日午後2時、菜那美は陸翔と共に、駅前にある大きなショッピングモールへと来ていた。

 陸翔が「午前中は、部活の練習があるから」ということで、午後からということになったのだ。

 菜那美は、午前中のうちから待ち遠しくて待ち遠しくて、首を長くして待っていた。

 常にそわそわとしながら。

 なので、こうしてモール内へと陸翔と二人で足を踏み入れたとき、菜那美はその浮き立つ心を隠すのにかなり苦労していた。

 エスカレーターに乗っている途中で、陸翔が言う。

「ああ、水着は俺が買ってやるから」

「えっ?!」

 驚く菜那美。

 陸翔は表情を和らげて言った。

「普段から菜那美にはかなり世話になってるからな」

「で、でも……。私だって、ちゃんとお小遣いを持ってきてるし……」

「小遣いって言ったって、金額が限られてるだろ。俺はなんだかんだで、最近までずっとバイトしてきてて、多少貯金もあってな。だから、気にするな」

「え……。で、でも……申し訳なくて……。私、彼女でもないのに……」

 思ったままを口にする菜那美。

 言ってから後悔はしたが。

 ただ、陸翔はそこには一切触れず、呆れたように笑いながら言った。

「まぁまぁ、たまには借りを返させてくれって」

 陸翔が一度言い出したらなかなか引かないことを、長年の付き合いから菜那美も知っていた。

 なので、ここまで言われると断ることは難しく感じる菜那美。

 菜那美は申し訳なさそうに言った。

「じゃあ、お願いね……。ありがとう」

「いいって、気にするなってば。どの店で買うんだ?」

 2階でエスカレーターを降りながら陸翔が尋ねる。

 菜那美は前方を指差しながら応えた。

「あっちにあるお店でお願い。前もあそこで買ったから」

「了解。じゃあ、行こうぜ」

 二人は並んで、その店へと向かって歩き出した。

 店内に入ると、まっすぐ水着売り場へと向かう二人。

 そして早速、女性用水着のコーナーを見つけると足を止めた。

 陸翔が言う。

「今日は時間がたっぷりあるから、ゆっくり選ぶといいぞ」

「ありがとう……」

 陸翔の気遣いが嬉しくなる菜那美。

 並んでいる水着を見ながら、菜那美が聞いた。

「陸翔や智孝君って、どんな水着が好みなのかな?」

「べ、別に俺の好みはどうだっていいだろ」

 やや顔を赤くして陸翔が答えた。

「だけど、せっかく陸翔に買ってもらうのだから、陸翔の好みも聞かないとって思って……」

「俺のことは気にするな。ま、まぁ、俺だって、智孝の好みを100パー把握してるのかっていわれると、はなはだ疑問だし、ある意味俺の趣味が入り込む可能性は大だけど……」

 相変わらず顔が赤く、早口の陸翔。

 菜那美は「陸翔の好みの水着を着たい」と、そればかり考えていた。

 すると、急に右前方を向く陸翔。

 菜那美もつられてそちらを確認すると、女性店員が足早に二人のもとへと歩いてくるのに気づいた。

 20歳代とみられる、なかなか美人のその女性店員は、二人のそばまで来ると微笑みながら口を開く。

「彼女さんの水着をお選びですか? ビキニかワンピースか、どちらにいたしましょう?」

 快活に言われたこのセリフに、菜那美はドキリとして固まってしまった。

 慌てふためき、喉が急に渇いてきて、全く言葉が出ない菜那美。

 そんな菜那美とは対照的に、平然と陸翔が答えた。

「一応、ビキニを」

 菜那美は再びドキッとした。

 陸翔が全く「彼女さん」の部分に異議を唱えないことに。

 冷静に考えると、「自分たちは、恋人同士に見られてもおかしくない」と理解できる菜那美だったが、冷静さを失ってる現状ではただただ「恋人同士に見られて嬉しい。そのことを陸翔が否定しないことも嬉しい」としか考えられなかった。

 狼狽して言葉が出ない菜那美を不審に思う様子は毛ほども見せず、女性店員は相変わらずにこやかなままで答える。

「ビキニでしたら、そちらにもございまして、そちらの方が多様なサイズが揃っております。ご案内いたしますね」

 そう言って、店内を案内してくれる女性店員。

 菜那美と陸翔は黙ってついていった。