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天国の扉

セフレの彼は幼なじみ41

 翌日の終業式とホームルームは滞りなく行われ、正午になる前には、菜那美たちは解放された。

 陸翔は食堂へ昼食をとりにいくというので、菜那美は一人寂しく帰ることに。

 しかし、明子たちに挨拶してから教室を出たところで、廊下にいた智孝から声をかけられた。

 見るからに、菜那美を待っていてくれた様子だ。

「菜那美ちゃん、もう帰り?」

「うん、そうだよ。智孝君も?」

「ううん、僕はこれから部活へ行かないと」

 智孝は陸上部に所属していると、以前から菜那美に話していた。

 言葉を続ける智孝。

「でね、その前にお昼ご飯を食べようとしてるんだけど、菜那美ちゃんはお昼はどうするの?」

「あ、特に予定がないから、家に帰ってから自分で何か用意しようかなって。お母さんも仕事で、いないから」

「じゃあ、僕におごらせてよ」

 嬉しそうに自分の胸を手でトンと叩いて言う智孝。

 そんなとき、菜那美の背後のドアが開き、教室から明子や清美が出てきた。

 早速、明子が大げさな身振りでニヤニヤしながら言葉をかけてくる。

「ああ~! ラブラブカップルが出現した!」

 すかさず、菜那美が言葉を返す。

「もう~、明子はそんなことばっかり」

「ははは、ごめんごめん。でも仲が良いのはいいことだよ。邪魔してごめんね! 菜那美、夏休み中はまた何度も連絡するからね。ではでは、早乙女君もまたね」

 明子はそう言うと、手を振って歩き出す。

 清美や他の子数人も、「またね」と言って、菜那美と智孝を残し、立ち去っていった。

 智孝が申し訳なさそうに、後頭部を掻きながら言う。

「冷やかされてしまったね、ごめん。こんなところで立ち話しているせいだ」

「ううん、別に智孝君のせいじゃないよ。それより、さっきの返事なんだけど……ホントにいいの? 私の都合は大丈夫なんだけど、おごってもらうだなんて、何だか申し訳なくて……」

「菜那美ちゃんさえよければ、ぜひおごらせてよ」

 そこで、智孝はきょろきょろと辺りを見渡し、誰もいないことを確認するような素振りを見せてから、声を落として続けた。

「そもそも、僕たちは一応付き合ってるって設定でしょ。付き合ってから、まだ日が浅いとはいえ、二人っきりでいるところを他の人たちにも見せておかないと、あらぬ疑いがかかる可能性があるからね。『本当に付き合ってるのか?』ってね」

「たしかに……」

 菜那美も声を低くして同意を示した。

 智孝は再び陽気さを取り戻して言う。

「そういうわけで、じゃあ決定だね。一緒にお昼を食べに行こう。何か食べたいもの、ある?」

「う~ん」

 突然聞かれて、うつむく菜那美。

 すると、智孝が言う。

「特になければ、この学校の近くにあるファミレスでいい? ファミレスより近くに、牛丼屋とラーメン屋もあって、僕はどっちも常連なんだけど……さすがに、彼女ととる始めての食事に、牛丼やラーメンは色気がないと思って」

 面白そうに笑う智孝につられて、菜那美も笑顔になった。

 心の中で、「智孝君って、こんな気さくな人だったんだ。気が合うかも」と思い始める菜那美。

 菜那美が元気よく答えた。

「じゃあ、そこでお願い。その……ごめんね、おごってもらって」

「オッケー! いえいえ、気にしなくていいよ。もう辞めたけど、つい最近までバイトしてたし、貯金はまずまず貯まってるからね」

 そういえば陸翔も同じようなことを言っていたな、と思い出す菜那美が聞く。

「やっぱり、受験勉強のために、バイトを辞めたの?」

「うん、もちろん! 部活も、この夏いっぱいで卒業かな。じゃあさ、ここで立ち話も何だから、ファミレスで腰を落ち着けてゆっくり話そうよ」

 ここで再び、周りを見回し、誰かに聞かれていないか確認してから智孝が言葉を続けた。

「作戦会議も兼ねてね。あさって土曜日、僕たちにとって大きなイベント第1弾が控えてるでしょ」

「うん」

 言うまでもなく、プールでのダブルデートのことだろう、と菜那美にも分かった。

 智孝は自らも軽く頷くと、廊下の先を手で指し示しながら言う。

「じゃ、行こっか。ついてきて」

「はーい、案内よろしくね」

 そして二人は連れ立って、ファミレスへと向かった。