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天国の扉

セフレの彼は幼なじみ35

 帰り道、陸翔と二人並んで校門を出た瞬間、菜那美が早速切り出した。

「土曜日、よろしくね」

「ああ、プールへ行くんだったな。こちらこそよろしく」

 相変わらず無表情で答える陸翔。

 菜那美は恐る恐る、さらに突っ込んで話を聞くことにした。

「楽しみだね。泳ぎが上手い陸翔の勇姿がまた見られるね」

「そんなにおだてて、何か期待してるのか? 何も出ないぞ」

 少し表情が柔らかくなった陸翔。

 菜那美は嬉しくなった。

 陸翔が続ける。

「でも、泳げるほどのスペースなんかないだろうな。夏休みだから、どこのプールもきっと混んでるぞ」

「だよね……」

「まぁ、泳ぎたけりゃ、海に行くしかないな」

 一緒に行こう、とは言えない菜那美は、言葉を飲み込んだ。

 陸翔が何かを思い出したかのような表情で言う。

「そうだ、去年のあの水着はやめておけよな。きわどすぎるから」

「え?」

 菜那美にはすぐに何のことか分かった。

 去年、一緒に室内プールへ行った際に、着ていたビキニのことを言っているのだろう、と。

 陸翔がそういう意見を持っていたのが意外だった菜那美が言う。

「でも、あれって、そんなに過激じゃない気が……」

「布の面積が小さすぎるだろ」

「そうかな、あのぐらい、普通な気がするけど……」

「ともかく、他のヤロー共がいやらしい視線を菜那美に向けてたのは事実だ。また痴漢に遭ったら困るだろ」

「そ、それは困る……」

 陸翔と一緒に出かけていると、常に陸翔の視線以外は気にしない菜那美が、他の人の視線に気づくはずもないのだった。

 陸翔が嫌がっているなら、あの水着はやめないと……と考える菜那美。

 すると、ここで菜那美に一つの名案が浮かんだ。

 早速、切り出す菜那美。

「じゃ、じゃあ新しい水着を買おうかな。一緒に選んでくれないかな」

「誘う相手が違うだろ。彼氏の智孝に頼むべきじゃねーのか?」

 この反撃は瞬時に予想していた菜那美が、颯爽と切り返す。

「でも、私まだ付き合ったばかりで、智孝君の好みとか全く知らなくて……。陸翔は智孝君と仲良しでしょ。彼が好きそうな水着を選んでくれるかな? 彼と一緒に選ぶよりも、当日いきなり見せたいから。サプライズ的な感じで」

 本心では、誰よりも陸翔に見せたい菜那美にとっては、心にもないことを言うのがツラかったが、「一緒に水着を買いに行くためだから、背に腹はかえられない」とグッとこらえて言った。

 幸い、陸翔は怪しむ様子もなく、納得したようだ。

「なるほど、じゃあ一緒に見に行ってやるよ。でも今日はダメだぞ。俺がもう、やる気満々だからな。帰ったらすぐやるぞ」

「う、うん、もちろん」

 菜那美としても異論はなかった。

 そして、これで一緒に水着を買いに行く約束まで取り付けることができて、大喜びの菜那美。

 それから駅に着き、電車に乗り込むまでの間は、たわいもないおしゃべりをして過ごした。

 電車に乗り込んだ二人だったが、この日もかなり混んでいた。

 窮屈な車内で、必然的にギュッと密着する二人の身体。

 菜那美が意識的にそうなる位置へと身体を動かしているせいかもしれなかった。

 陸翔と身体をくっつけることができて、菜那美はうっとりとし始める。

 陸翔の方はというと、乗り込んだその瞬間から、菜那美の周囲に目を光らせている様子だった。

 恐らく痴漢がいないか警戒してくれているのだろう、ということは菜那美にも明白だ。

 二人を乗せた電車は、定刻どおりの運行を続けていた。

 それは、二人が乗り込んで10分ほど経過した頃のことだ。

 何かに気づいたような様子で、陸翔の眉がピクリと動いた。

 菜那美は窮屈な状況にも関わらず、陸翔と身体を接触させていることでうっとりしており、何ら異変を察知していない。

 陸翔はやや慌て気味に、両手を菜那美のわき腹へと伸ばすと、そのまま手を伸ばし続け、菜那美のお尻へと当てた。

 その丸くて柔らかいお尻を、スカート越しに掴む陸翔の両手。

 菜那美は一瞬だけ目を見開いて驚いたが、「痴漢防止のためとはいえ、陸翔がまたお尻を掴んでくれた」と思い、胸のときめきが抑えきれなかった。

 素早く、自らも両手を陸翔の背中へと回し、まるで抱き合うかのような体勢をとる菜那美。

 ちょうど、痴漢に遭ったあの日と同じような体勢だ。

 しかし、陸翔の表情は険しいままだった。

 すると―――。