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天国の扉

セフレの彼は幼なじみ32

 その後、とりとめのない話を幾つか交わすと、二人はお互いの教室に戻ることにした。

 菜那美が自分の教室のドアを開けると、前2回と同じく、早速クラスメイトたちの好奇の視線にさらされることに。

 すぐさま、親しい友達数人が、着席する菜那美に近づいてきた。

 みんな、一様に笑みを浮かべている。

 その中の一人、特に菜那美と仲が良い明子が、満面の笑みを浮かべて尋ねてきた。

「また、早乙女君に誘われてたんだね、菜那美。こりゃ熱愛発覚も近いね! うっらやましい~!」

 菜那美はさっきの智孝とのやり取りを思い出し、「そういえば、言ってもいいんだっけ」と思って答えた。

 幸い、陸翔はまだ戻ってきていないようだ。

「あの、あまり大きな声では言わないでほしいんだけどね……早乙女君と付き合うことになって」

「えええ~?! マジ?!」

 菜那美の前置きを聞いたにも関わらず、明子を始めとする友人たちは揃って大声をあげた。

 すぐに、教室内にいるほぼ全員の人々の視線が、菜那美の周りに集まる。

 遠くにいる人も、耳をそばだてて聞いている様子だ。

 明子がさらに相好を崩して言った。

「コングラチュレイション!!」

 周りの友人たちも次々と、「おめでとう」と言ってくれた。

 少し顔を赤らめる菜那美。

 そんな風に目立つことに慣れてなかったので。

 それでもポツリと明子に言った。

「だから、大きな声では言わないでって。あと……コングラッチュレイション『ズ』だね、正しくは」

「いやいや、そんなことどっちでもいいでしょうが。そんなどうでもいいことより、熱愛ニュースのことを話そうよ! 菜那美は隠したいみたいだけど、こんなビッグニュース、隠していても、すぐに広まるってば! ねぇねぇ、もっと話を聞かせて! どういう経緯で付き合うことになったのか、などなど!」

 いつしか、菜那美の周りには人だかりができている。

 みんな身を乗り出して興味津々の様子だ。

 菜那美は苦笑しつつ答える。

「べ、別に特別な話は何もないんだけど。さっき告白されて、付き合うことにしたってだけで……」

 ざわつく周囲。

 明子は双眼をきらめかせて言った。

「やっぱり! 早乙女君の方からコクってくれたんだね! 何度も菜那美を呼び出してるから、いつかそうなるんじゃないかなって思ってたよ、私は!」

 いかにも、「自分の予想通りだ」と言いたそうな明子が続ける。

「菜那美は、髪型で大損してるけど、実は可愛いからね!」

 今度は菜那美がびっくりして尋ねた。

「え? この髪型、ダメ?」

 今の菜那美の髪型は、お団子ヘアーだ。

 すると、明子の次に、菜那美と仲の良い清美が答える。

「ううん、その髪型は可愛いよ。でも、菜那美はポニテとかサイドテールとかするとき、前髪をオールアップみたいにして、おでこを出しちゃうじゃん。あれが、イマイチ、菜那美には似合わないかなってみんなが言ってるよ」

 初耳の菜那美は、「そうだったんだ」と答え、無意識に前髪をいじった。

 明子が笑顔で言う。

「そうそう! 菜那美はやっぱり前髪下ろしてる方がいいね! で、で、そんなことより、告白の言葉はどんなだったの?」

 明子たちはますます興味津々の様子だ。

 菜那美はちょっとだけ「めんどくさい」とも内心思ってしまったが、よくよく考えると、「明子が智孝君と付き合うことになってたら、きっと自分も色々知りたがるはず」だと気づき、真面目に答えることに。

「普通に『付き合ってください』ってね」

 周りから「おー」という声があがる。

 その後も、明子や清美から、数多くの質問を受けた菜那美は、ところどころ「まだ付き合い始めたばかりだから、分からない」と言葉を濁しつつ、応答を続けた。

 周囲の好奇心は尽きることがなかったものの、やがて昼休み終了を告げるチャイムが鳴って、菜那美はようやく質問攻めから解放されることに。

 するとチャイムの途中、どんどん教室へと戻ってくるクラスメイトたちの中に、陸翔の姿を認めた菜那美。

 その瞬間、言いようのない後ろめたさが菜那美を襲った。

 陸翔だって絵莉花という彼女がいるわけなので、何ら菜那美が後ろめたい思いをする理由はないのだが。

 恐らくは、あくまでも付き合うふりということで、陸翔を騙すということへの罪悪感がそういう気持ちにさせたのだろう。

 菜那美は心の中で、「帰る途中に、しっかり話をしよう」と心に決めた。